灰の降る町

 西鹿児島駅前のビジネスホテルで目覚めた。昨日1053kmを走った疲れは残っていない。ゆっくりと朝食をとり、アベニール荷室のストマジを組み立てる。駐車場のおじさんが物珍しそうに見に来る。一言二言交わして出発。



 鹿児島港からフェリーに乗る。 近代的な港から10分間隔で発着するフェリーの甲板清掃員は、昨日の雨で今日の降灰は多い、という。船旅は10分ほどで終わった。

 桜島の展望台へストマジを走らせる。灰が積もった道路は滑る。カウンターステア一回。ゴーグル無しでは数十メートルと走れないだろう。粉雪のように舞う灰。  展望台で記念撮影・・・と行きたいところだが、目の前の桜島は噴煙のなかに隠れている。こうしている間にも灰は降り続き、上を向いては歩けない状態だ。
 土産物屋で絵はがきなどを買い、そそくさと山を下りる。

 山すそを回り込む桜島周回道路には、シェルターが作られている。  以前の噴火では、この温泉街に大量の灰が流れ込むなど町の機能や人々の命、生活を奪った。桜島という活火山とともに暮らすということ、それは並大抵のことではない。

 桜島から錦江湾を取り巻くように走る。垂水から根占へ。大隅半島の最先端・佐多岬は昨年走った。そのときもこいつ・ストリートマジックといっしょだった。今回は通り過ぎて錦江湾から太平洋側へ回り込む。

 桜島から離れると、噴煙の影響から逃れた青空が広がる。  ロケット基地のある内之浦町、道路脇にあるアンテナが休憩地になっている。このアンテナは動いている。これが本物なのか単なるオブジェなのかはわからない。「手をふれるな」などの記載は見られなかった(あったのかもしれないが、少なくとも私は見つけていない)が、可動部に手を挟む危険性がある。いいのか?

 内之浦で林道へ入る。今日は月曜日、工事の車がひっきりなしに通る。雨の影響で崩れそうなために通行止めになっている林道、ロープ位置は高く、そのままくぐり抜けられる。「崩れそうな」状態なのであって「崩れて通れない」のではない。入るか入るまいか・・・
 そこへエンジン音が聞こえた。現れたのは九州南部営林局のエスクード・・・さくっとくぐって入っていった。これじゃあ入るに入れないでしょうが(笑)脇道へ入って見ればブッシュに行く手を遮られる。
 荒れた林道をいくつか走り、町へもどろうとしたとき後輪がばたついた。

 ・・・パンクだ・・・

 町までどれくらいある?
 携帯電話が通じるので、自転車屋を探す。
「引き上げに来てもらえませんか?」
「5時まで車がないんです」

・・・待てないな。
時速15kmでゆっくり走る。時折停まってタイヤの温度を下げる。1時間近くかけて自転車屋へ。幸いダメージもなく、パンク修理OK。

 高山から鹿屋へ、内之浦湾を見下ろすワインディングを軽快に走る。垂水へ戻ったところで夕日の時間。夕日が錦江湾に沈みきると時を同じくして鹿水フェリー「おおすみ7」は出港した。

 さて、この灰をなんとかせねば・・・

文・写真 : 河村 格


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