File07 トランポの専門店

 走りに振ったオフロードバイクでは長距離走行は大変だ。
 戦闘的なポジションは窮屈で、細いシートで尻が痛い。体だけでなくバイクにとっても楽ではなく、タイヤが減るなど、目的の林道・コースへ着くまでに消耗してしまう。

 そんなとき、トランスポーター(今後トランポと略)があればずいぶん楽になる。
 疲れの要素は固定された姿勢と、外部要因(日光、風、雨など)によるものが多いので、それらが解消される車は走行可能距離が長く行動範囲が広がる。

 トランポとして多く使われているのは、トヨタハイエースをベースとしたもの。もちろん無改造でもバイクが積める。それを改造してキャンピングカー登録した物が人気である。
 キャンピングカーを作る業者は数多くあるが、ことバイクを載せることを考えると、必ずしも適した物ばかりではない。やはりライダーにはライダーの用途があり、それをわかって作られている物がもっとも使いやすいことになる。

 今回、静岡県浜松市を拠点にライダーの立場で「自分が使いたい」トランポ作りをしている店を2軒訪ねてみた。
 小栗伸幸さん、渡辺親弘さんという国際A級MXライダーの店だ。


 この道ではNo1と言われる「オグショー」は、小栗伸幸さんが代表を務めるトランポ専門店だ。

 やはりここでもハイエースが主流。中でも特装車という、キャンピングカーベース車両を多く扱う。これは、バンボデイにワゴンの外装と3リッターディーゼルターボエンジンを搭載した物で、走りが自慢の快速トランポだ。
 ボディタイプはハイルーフスーパーロングと標準ルーフロング。ベース車両の価格は小振りな標準ルーフロングの方が高い。

 基本がバイク積載で、2台のオフロードバイクを積むことを目的としている。
 まさか泥だらけのまま積む人も居るまいが、油汚れなどの対策も考えられている。床はリノリューム?が貼られ、サイドボックスで区切られたホイールハウスとの継ぎ目にはシールされている。簡単な水洗いが可能だ。

 上の写真のサイドボックスは木製だが、今後はFRPのものが主流になっていく。もちろん肉厚が薄くなる分サイドボックスの容量も増える。

 キャンピングベッドをセットし、寝てみる。この車は5人乗り登録なので、就寝定員は2名。広々とした空間が作れる。


 次に訪れたのは渡辺親弘さんの「X−point(クロスポイント)」 まだ開店して2年という新しいショップだ。

 キャンパーの多くが採用しているセカンドシートがこれ。イタリア製で、後ろ向きにもできる。もっとも5人乗りのこの車、回転対座の意味はなく、スライド可能なフルフラットシートとしての利用だ。
 複雑なスライド機構を有しており、前後スライドの他、左右にもスライドする。フルフラットにするときは、前方に移動して座面を反転、背もたれを倒す。ドア側にスライドさせてステップ部にオーバーハングさせ、右奥、シート中央の隙間にウレタンマットを詰めれば出来上がり。

 「X−point」のオリジナルがシート下のパイプステー。「オグショー」が幅広のマットをサイドボックス間に横3分割に渡してベッド化するのに対し、「X−point」は幅の狭いマットを縦2分割で使用する。
 これにより、左半分だけをベッドにすることが可能で、バイク1台を積んだまま一人が寝ることができる。

 この車は「X−point」代表の渡辺さんが日常使用しながらデモカーとしているもの。オーディオ関係にも凝った作りをしており、豪華な作りである。


 さて、気になるお値段の話。
 新車の特装車をベースにした場合、370〜400万といった値段になる。もちろん中古車ベースでの製作も可能、キットパーツでの販売も可能だ。
 無改造の特装車は市販されないので、中古車利用の場合は通常のバン(スーパーGLが人気)となるだろう。なにぶんハイエース、人気が高く程度の悪い物でも目が飛び出るような価格で流通している。特に企業の営業車両上がりの場合、程度は劣悪。長らく基本構造の変わらないこの車(最新型で前面衝突基準適合)を買い換える時というのはなんらかの不都合があると考えるのが筋で、程度の良い物を探すのは困難だろう。

 「オグショー」では、全国のディーラーで受け取れる仕組みを採っている。発注フォームも定型化されているのでできることだ。老舗ならではというところ。「X−point」の場合もメンテナンス等はトヨタ店で行うシステムを採っている。

 さあ、あなたも一台、いかがですか?

文・写真 : 河村 格   出演 : 佐藤賢一


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