「ライダーは海っすよ！」
全ては右へ曲がったことから始まった。
先月のツーリング企画で初期トラブルを発見したＨｕｓａｂｅｒｇは修理のためにバイク屋にあずけてあった。日曜日、起きてみれば雪が舞う天気。しかし今日は取りに行かなければならない。重い腰を上げてバイク屋へ向かう。幸い天気は回復しはじめ、昼前にはすっかり晴れていた。
もともと別の企画を考えていて、その取材をするはずだった。しかし、そこへ行くためには左へ曲がらなければならない。それなのに、右へ曲がってしまった。単なる気まぐれだが、計画はすべて白紙に戻してお気軽ツーリングと決めた。
「ライダーは海っすよ！」
とある仲間の言葉である。なかなか良い言葉だと思っている。今日はちょっと海へ行ってみるかな。
渋滞がめんどうなので２区間ほど高速道路に乗る。音羽蒲郡インターから三河湾オレンジロードで山を抜け、一気に海まで到達だ。週末少し雨が降った影響か、やや風は強いものの天気は上々。蒲郡の海へはあっという間に到着した。
竹島という神社の島がある。ついでだから行ってみる。長い橋を渡るが、横風が強くナナメに歩く人たち。観光スポットだから若い女性も結構いるわけで・・・ご想像におまかせする。
カモメがホーバリングしながら観光客の手から餌を食べている。カモメという鳥、なかなかの強者。うまく風をとらえて悠々と飛んでいく。
神社で賽銭を投げ入れ、軽く参拝。・・・俺は伊勢神宮の系列の高校を卒業している。そこでは正式参拝（２礼２拍手１礼）を教えられたが、こんなもの結婚式ぐらいでしか使ったことがない。神社仏閣は嫌いではないので旅の途中ではよく寄り道するのだが、未だかつて正式参拝をしたことがない。
海を眺めていたいけれどあまりの風の強さに撤退する。ちょいと山でも走るか。
このあたりには三河湾スカイライン、三ヶ根山スカイラインという２つの道路がある。三河湾スカイラインはローリング族のメッカで、かつてレーサーレプリカに乗っていた時代には訪れたこともあった。弱弱なワタシにはあそこを堂々と走る勇気などないのだけれど。
三ヶ根山には林道もある。少し前、ＢＯ誌の「ここどこ」があそこであったとき、いろいろと物議をかもしたものだ。思い起こせばあれが「林道走行迷惑論」（そんなものはないけど）の始まりだったか。そのときの林道を少し走ってみた。
ハイカー、ＭＴＢなどに混じって、バイクも来れば乗用車（！）も来る。あまり無理もできぬ、と慎重に走る。このあたりの林道はたいてい抜けているのだが、せっかく２６０円払った有料道路、もったいないので林道はそれぞれ往復してまたスカイラインに戻る。スカイラインを走った写真を撮るのを忘れた。というよりも、止まるのがもったいなかったことと、ややデリケートなタイヤとパワーのおかげで余裕がなかっただけだ。ここはやっぱりオンロードバイクがいいだろうね。 
さて海沿いルートに戻るが、以外と海の見える区間は少ない。吉良、一色、高浜・・・だんだん見慣れた地名が現れてくる。西尾・・・やめてくれ、仕事でさんざん通った。そして碧南。 
数年前、この碧南までルートを暇な日曜日のツーリングコースにしていた。ＳＸに始まって、ガンマ、ＫＲ、アルテシア・・・それぞれで何度も通った道。仕事が変わり、住むところが変わり、ここは遠いところになった。そしてあの日々と同じ岸壁の同じ欄干のところにＨｕｓａｂｅｒｇを乗り入れる。
あの日と同じ海が目の前にある。春の海 終日のたりのたりかな・・・
セピア色の想い出・・・（バイクは新しいけど）文・写真 ： 河村 格
