第2話 南国和歌山で雪に遊ぶ

 酒の肴に、ヒラメの刺身を買ってきた。が、醤油がない。しかたなく、白だしをかけて食べたが、なんともまずい。醤油、買わなきゃ・・・
 醤油は、和歌山県湯浅の角長と決めている。国道42号線沿いに出店を構える老舗で、ここのたまりはお気に入りの一品だ。頼めば送ってもらえるのだが、毎年1〜2回買いに走る。

 俺は仕事で一つの国家試験を受けることになっていた。
 学生時代、セミナーで少しかじっただけの技術。すでに10年以上の時がたっており、今更覚えているはずもない。試験を翌日に控えた土曜日、練習などと言ったところで手に付くはずもない。なにもしないで家でごろごろしているのも何だし、出かけてみるか。

 車にストリートマジックを積む。どうせ和歌山へ行くのだから、少しは林道を走りたい。とは言っても真冬にバイクで出かけるほどの気合いも体力もない。
 名阪国道を大阪方面へ向かうと、針のあたりで雪になった。スキー気狂いと言われているぐらいで、装備もしっかりした車だから雪道走行に不安はないが、周囲の車が走れなくなるのでノロノロ走行につきあわされる。
 湯浅までは、高速道路が通じている。阪和動から海南湯浅道路経由、ということになる。先に買うのも何かな、と、そのまま御坊湯浅道路に乗り継ぎ国道を北上する。
 雪が少しづつ道に残るようになってきた。林道へ入ろう、と広場を探すが、なかなかいい場所が見つからない。まもなく目当ての橘川林道に着いてしまった。いきなり雪が深くなっていたので、車のまま入ってみる。戻ってくるより通り過ぎた方が便利なので、林道の途中に車を停めておもしろそうな雪道を走ってみようという腹だ。

 今回は同行者のいない一人遊びなので、最大限の安全確保は必要。ストリートマジックには冬用の装備がないので、あまり奥深く進むわけにも行くまい。そんなことを考えながら、広場を見つけて、そこでストリートマジックの組立を行っていた。

 峠の上から、音が聞こえる。
 ホーンをならしながら、なんとバイクが降りてくる!・・・あれ、あれは!!

 なんと、我らが怪しい軍団の林道特攻隊長、吉峯氏じゃないか!?
 さすがは怪しい軍団、なんの連絡も約束もしていなかったのに、こんなところで会うとは。しかも吉峯隊長はシェルパでの登場だ。


 しばらく雪の林道で遊ぶ。タイヤが太くて車高が低い、オートマチックのストリートマジックは下りの新雪をものともしない。シェルパをぐんぐん引き離す実力を見せる。逆に登りは、MT21を履いたシェルパが上っていくのに、ストマジはスリップして上らない。2足歩行状態でゆっくり付いていくのみ。そんな感じで抜いたり抜かれたりを繰り返しながら雪を堪能する。

 そろそろ帰ろう、とストマジを車に積み込む。
 峠を4WD+スタッドレスのアベニールで走りながら後続の吉峯隊長を見やれば、結構なペースで追いついてくる。おそるべし、特攻隊長。

 峠で一休み。南国和歌山でこれだけの雪景色が見られるとは・・・
 道の駅で吉峯隊長と別れた俺は、当初の目的通り湯浅へ向かった。角長の醤油、5合瓶2本。いつもこの組み合わせだ。これで目的は達した。さて、帰ろう。

 あ、試験用の計算機を買わなきゃ・・・

 文:河村 格 写真:吉峯茂雄、河村 格


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