木曽三川の冬


木曽三川に密着し初冬の水辺を走る。

 木曽三川・・・木曽川、長良川、揖斐川を総称してそう呼ばれる。いずれ劣らぬ日本を代表する大河が、濃尾平野を貫いて流れている。

 それらの三大河が最も近づく所に、「木曽三川公園」がある。シンボルのタワーから眺めれば、蕩々と水を湛えた大河がうねるように流れているのがわかる。

 立田大橋を渡り、長良川右岸堤防を走る。著名な地図にも記されている通り、「行政上は道路ではない」が、延々5kmにわたるフラットダートが続いている。車の進入も多いが、見通しの良い堤防のこと、ここで事故を起こすようなことがあればそれは暴走している時ぐらいか。
 やがて右手に木曽川が寄り添い、2本の大河に挟まれて堤防は続く。

 長良川河川敷には当然オフロードバイクなら入ってみたくなる斜面もある。最初は好き者が勝手気ままに走っていた河川敷、月日がたつにつれてあたかも獣道のようにコースが出来上がった。人手による造作ではないが自然の物でもない。休日にはモトクロッサーを持ち込んで走っている人たちが多い。
 河川敷の管理は国の手によるもので、民間が手を入れることはできないようだ。きちんとしたコースにしてもらえばありがたいのだけれど。そして、ここには、モトクロス禁止の立て看板もある。

 つい最近まで、長良川には渡し船があった。岐阜県営によるもので、モーターボートが係留してあったのだが、今はそれもなくなっている。ただ船頭小屋だけが寂しく残されていた。

 木曽川には、どこかの学校の飛行場がある。今日は飛んでいなかったが、風の穏やかな天気のいい日はグライダーが音もなく飛んでいる。今日はその代わり、といっては何だが、ラジコン飛行機を飛ばしている人たちがいた。送電線のないこの界隈は、飛行機・凧上げにはもってこいの場所だ。

 南濃大橋で右岸堤防と別れ、左岸堤防(通称”中堤”)で下る。こちら側は交通量の多い県道扱いだ。法定速度をはるかに越える速度で流れており、パワーのないオフロードバイクでは結構必死で走ることになる。
 ほどなく木曽三川公園に戻ると、そこからは右手に揖斐川が寄り添う。高速道路、鉄道とくぐって、国道一号線に突き当たって”中堤”の旅は終わる。目前に、一躍有名になった「長良川河口堰が迫っている。


 長良川は堰のない川、として知られていた。サツキマスなど固有の絶滅に瀕した生物なども生息している命の川だ。そこに河口堰を建設することになり、多くの反対運動が繰り広げられた。
 しかしその多くは、地元の活動ではなかった。最も影響を受ける(しじみ漁などが盛んに行われていた)漁師町では、早期に補償に応じている。反対運動が大きく取り上げられたのはその後のことであり、地元住民の感情はいかばかりか・・・

 魚の遡上を妨げる、川が死ぬ、と訴える反対派に対し、建設側は
「魚道で遡上は確保出来る」
と自信を見せた。長良川河口堰資料館には、魚道を横から見ることが出来るガラス張りの回廊がある。



河口堰にてなに想う・・・

 ここから先は汽水域〜海域となる。長良川と揖斐川が完全に同一になり、海へと注がれる。大河の旅の終わり・・・

文・写真 : 河村 格


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