山へ



 海にいた。



 風景は少々夏っぽくないけれども、やはり夏は海。



 海は食べるものも多いからね。
 海産物直売所の片隅でサービスのあら汁と今買ったばかりの寿司や干物などを食べながら、どこへ行こうか考える。

 海辺って走るところないんだよな・・・



 となればやはり山へ行くのか。

 語呂のよくない酷道を走り始める。対向車など来ない。



 海からわずか2〜3kmだが、渓流は青く澄んでいる。
 平地が少ないのですぐに山になる。だから川の流れも急。



 急なのは流れだけではなかった・・・
 対向車も来ないはずだよ。道が繋がってないもの。

 ここ何年も、秋になると大きな台風が来て爪痕を残していく。
 去年も一昨年も、同じようなことを言ってた覚えがある。この道も何年か前に計画して、ほんの何日か前に通れなくなったんだよなあ・・・あれからまだ通れないままなのか。



 ・・・平成26年3月までって

 長っ!

 直す気あるのかな。まあ予測はしてたけど。
 ともあれ、これで計画はふりだしに。坂本ダムまで行ければサンギリ林道へ抜けて、などと考えていたけど、肝心の坂本周辺がダメ。おそらくサンギリも無理だろう。



 迂回するしかないわけで。
 三重と奈良は長い県境で隣接しているが、険しい山地が邪魔をして行き交う道は多くない。熊野まで下って北山へ抜ける。かなり大回りだが、こちらは見違えるほど整備されている。人口は尾鷲の方が多いはずだし奈良の中央へも先ほどのルートの方が近いのだけど、人の流れはこちらにあるようだ。



 ダム湖が寄り添って来た。



 迂回することかれこれ1時間、池原ダムにたどりつく。あのまま通行止めがなければ・・・寄り道が多くてここまでは来てなかったかな。
 過去に何度か訪れてもいるが、今や林道は期待できないし他に何があるでもないし。



 おや?なんだあれは?



 モノレールがあった。
 険しい山への交通として使われている例が時々紹介される。ここは実用しているのか、それともメーカーの展示用か・・・ってこんなところに作っても意味ないか。

 面白そうだよなあ。どこかで乗れんだろうか。



 池原ダムの湖が見える高さまで上がってきた。
 雨の多い地域だ。水はもちろんたっぷりある。



 しかし視線を逆の方向に向ければ、おびただしい数の流木が湖面を埋め尽くしていた。
 流木は山から流れたもの。崩れて落ちたものが多いだろう。道路が通れなくなるのもうなずける。



 湖面まで降りられるところがあった。

 流木に埋め尽くされた水面が、まるで地面の様に見える。
 打ち上げられた木の株はむしり取られた様になっている。大きな株だ。それだけ大きな力が自然にはあって、簡単には抗えるものではない。



 トンネルを抜けると、上北山から下北山へ。

 いやまて、下から上へ向かって行ってるはずで、下北山村はだいぶ前に通り過ぎたはずだが・・・間違えて戻ったわけではないよ。

 このあたりは土地が入り組んでいるのでややこしい。北山村は和歌山県で、下北山村と上北山村は奈良県。和歌山県の北山村は飛び地もあって三重県と奈良県に囲まれて・・・ってよくわからない。



 で、今度は上北山村。しつこいようだが戻ったわけではないよ。
 温泉はここじゃなくて、別の所に目的があるのさ。



 トンネルを抜けたところからそちらへ向かう・・・はずだが、ここで交通整理。
 ご多分に漏れずここも台風被害で本来のルートが使えない。かつての林道を使って行け・・・と。



 林道とは言っても完全舗装されてしまっている。
 こんな狭い道だが、今はバスもここを通らないと行けない。

 行きたいところは、大台ヶ原。

 そう、山だよ。



 三重と奈良を隔てる急峻な山地。簡単に超えられないのは先に話したとおり。
 そこにかつての大台ヶ原ドライブウエーがある。すでに無料化されて久しいので大台ヶ原観光はかなり昔からのもの。

 見渡す限り、山。



 着いた着いた。夏でも涼しい山の上。



 ここからは歩かなきゃ行けない。
 こんな場所だから登山者は年配の男性が多いが、こんな時代だから若い女性がそれ以上に多い。「山ガール」ってやつだな。服装は見てるだけで楽しい。



 まあでも熊なんか出た日にゃ逃げるに逃げれんし。熊なんざバイクで林道走ってりゃ遭遇したこともあるけれど、音の大きいバイクには寄っては来ないもんだ。歩いてりゃいろんな話は聞くわな・・・



 ということで俺は登らんけども。
 資料館など覗いてみて、雨の多さを知る。年に380日以上(!)雨が降ると揶揄される屋久島より雨が多いのだと。



 さて、目的地へ行こうか。

 って、あれ?

 ゲートが閉まっている・・・



 大台ヶ原ドライブウエーから、断崖絶壁の細道が続いている小処温泉は山奥の秘湯である。もっとも案外近代的らしいけれども。
 「本日臨時休業」とあるが、実際は現在休業中だと。上北山からの県道が通れないわけだ。ここからの道がどうなっているのかはわからないが、県道が使えないのでは営業できる状態ではないということ。

 サンギリ峠から小処へ抜けて大台へ・・・という描いていたシナリオはほとんど達成できなかった。



 しょうがねえなあ・・・
 奈良県なのにスキー場がある和佐又、行ってみたい気もするが片側交互通行を待つ間に面倒になって。



 でもって川上村。
 昨年走らなかった林道のリベンジでもするか?それとも行けなかった秘湯のリベンジか?おとなしく温泉か?

 とりあえず、山へ行こうか・・・

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