其の十二 宇高航路

 ある日、新聞に載った記事。

 「宇高航路廃止」

 廃止?なぜ?

 高速値下げにより客を奪われて維持できなくなったということで。
 これはいかん、乗りに行かなくては・・・



 で、高松。宇野行きフェリーの看板が目に入る。JRも私鉄の琴電もこの港から出ている。

 実はここまでは高速道路で来ている。ETCを使えば休日は2000円少々で来ることが出来る。
 そりゃみんな高速使うでしょうよ。



 宇高航路は、現在四国フェリーと国道フェリーが共同運行している。
 「国道」というぐらいで、24時間絶えずフェリーが行き交っている。

 瀬戸大橋が出来るまではもっと多くの便があった。橋の開業とともに半減して今日に至る。



 存続できたのは瀬戸大橋の通行料が高額だったからで、トラック便などは多くがこの航路を使っていた。

 それが今、航路廃止を発表するに至ったのは・・・

 昨年から始まった高速道路の休日1000円走り放題。それによりフェリーより安く海を渡ることが出来るようになり、客が激減したということである。
 さらには「原則無料化」を押し出す政策により、頼みのトラック便なども望めなくなるから。



 そんなわけだから乗っておこうと。
 バイクでここまで来る時期にはもうフェリーはなくなる。いささか遠いので冬場のバイクはあきらめて。

 今では切符もこうしてコンビニ前の自動販売機で買うようになった。



 高速値下げに対抗するためにフェリーの料金を下げて運行していた。
 バイクならば高速より安い。自動車でも今は乗員全部が1車両の料金で乗れる。



 さて、乗り込もうか。
 何層ものフロアーをもつ大型の船ではなく、前後が見渡せる程度のコンパクトな船だ。



 タラップが上がり、船が離岸した。



 瀬戸内海はフェリー銀座で、たくさんのフェリーが行き交う。
 2隻のフェリーが至近距離(に見える)ですれ違い横切る様は海の交通健在、に見える。

 が、その中心であるべき宇高航路がこんなことに。



 四国が遠く離れる。
 最後尾が宇野での接岸側になるので、車は皆後ろを向いている。遮るものもなく。



 宇高航路の楽しみ。いやどちらかといえば古の国鉄宇高連絡船での楽しみであったのだが。
 甲板で讃岐うどんをすするのが通というものだった。

 今も船室中央の売店にはその名残が。



 もちろん甲板に出ていただくというもの。



 宇高航路の客を奪った瀬戸大橋は、実はかなり遠くにある。春の時期は霞んで見えるほどの距離だ。
 もっとも船のスピードと車のスピードではかなり違うので・・・



 宇野の港に入っていく。1時間ほどの航海はまもなく終わる。



 そして港に接岸した。



 タラップが開き、バイクを先頭に上陸する。
 これが最後になる・・・

 と、この時は思っていた。



 その後、反響の大きさにフェリー会社が計画を見直した。
 6月から始まるとされる、新しい高速料金制度を見てから決めよう、と。

 4月12日、政府から発表されたその制度とは?

 本州四国道路に関しては、料金が3000円となる、ということ。

 これはフェリー会社に配慮したものだ、という。
 フェリー会社の方も、この政策には理解を示しているとか。

 ともかくも、宇高航路の廃止には待ったがかかった。
 今後の見通しが決して明るいわけではないのだが・・・

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