第53話 幸運だったということ
9月5日、土曜日。
毎月買っている雑誌がある。
仮に某誌としよう。「某」という字を音読みしてローマ字表記するとその雑誌の略称になるのが発端だが、今に至っては「暴誌」「亡誌」などと書くことも。いろいろと悶着の多い今日この頃を表すアテ字だがね。
まあ良いじゃないか、BACKtoOFFroadの元っちゃ元なんだから。
だけどね、ネットに傾きつつあるのは紙メディアとしてどうなのよとか。
でもそれが悪いことばかりじゃないということは評価せねばね。
良い点?それは今日の日。
通常この雑誌は6日発売であるが、6日が日曜日ならば遅れて7日になったり前倒しで5日になったりする。9月は前倒しで5日。土曜日に発売された。
その雑誌の中に読者参加のコーナーがあるわけだが、かつて手紙だけでの応募の時代は6日の消印が有効だったり、6日到着厳守だったりしたわけで。紙で送るということは写真を焼く時間も要るからね。必然的に2〜3日前までがリミット。
それがネット応募になって、デジタルデータがデフォルトとなったことで6日の23時59分までOKになったわけで。
で、今日と言う日が出てくるわけだが。
8月分の締め切りは9月6日。9月分の開始は9月5日。そう、この2日間は2ヶ月分両方に参加できるわけだ。
しかも1週間ほど前にはネット上にリークがあったので場所も予測できたし。
行かねばなるまいよ。
別にどうでもよいことなのだが、こういう特殊な事情は大好きだ。征服感というかだね。
前晩から出発して早々に8月分を終わらせ、ついでにと山間の駅で鉄道撮影などしていたその時に。
某氏(某誌ではない)からのメール。
「昼食オフしよか?」
と。
そんなわけで、O氏と落ち合った東北は白河。
発売当日の朝である。本屋が開くのを待って探した雑誌は、見つからなかった。
O氏に雑誌を借りて地図をコピーする。もちろん、あとで買うのだけれど。
さっそくバイクの準備をして走りに行こう!
林道の入り口にたどりついた様だ。ここかな?と地図を見て、ここだな、と合図。
さて林道へ入ろうとクラッチを握り、ギヤを入れる。クラッチ繋ぐ・・・
動かない。
なんだかロックしているような。バイクを前後に動かしてみたら動いたので走り出す・・・
わずか2mぐらいだったろうか?。いきなり後輪がロックしてバイクが横を向いた・・・
キックが降りない。どうもミッションがロックしてしまった様だ。
中国製の5速ミッション。今回から投入した新兵器はここまで回転も合わせやすくよかったのだが、まさかこんなことに・・・
ただ、幸いだったのはほとんどスピードが出ていない時点だったことだ。
軽量なバイクだから、もっと高速時点でロックしていたら?
O氏と一緒だったのが幸いだった。
そして、車に積んで来ていたことも。
さらにこの場所が県道からわずか数十メートルだったことも。
止まった場所のすぐ脇が車の駐められる広さだったことも。
車に積んで退散する。
・・・いや、昼飯喰って戻ってきた。
壊れたバイクを車載している間にO氏は目的の半分を済ませてきた。
そして、バイクを貸していただけるという。
YAMAHA WR250F
思えばHusabergに乗っていた頃、車検の際に見積を取ったのはこの形式ではなかったかと。
WRといえば今は対環境のトレールWR250Rだが、元はエンデューロレーサーのFの出来が良かったからだと思っている。もちろん全くの別物なんだが。
お言葉に甘えて、貸していただくことに。
久しぶりに乗るレーサー。
その強さはトレールに馴らされた今では些かもてあます状態ではあったが。
目的果たして、鉄道を撮りに行くO氏とお別れ。
全てに運があった。
場所も日程も、この幸運を導くためのものだったのかも。
目次