File70 中華その神髄

 ある日のことです。
 中華ミニモトに乗って林道を走っていました。

 突然回転が跳ね上がり、失速。



 原因はこれ、チェーン外れです。

 要はチェーンが延びていたわけなのですが、その要因としては、いつまでもボヨヨンと踊り続けるサスペンションにあるように思います。チェーンを無駄に引っ張り、延びを発生させているような。
 車体全部でわずか3万円台の中華製のバイク、サスペンションもお金がかかっていません。当然、品質も性能もそんなもの。

 そこで、まずは足回りからグレードアップを図ります。



 ミニモト用としてオークションなどで売られているやや高級なサスペンションを用意しました。
 メーカー名義はアメリカですが、製造は中国でしょう。価格は前後で車体より高いです。

 フロントは倒立フォークで三つ叉も付属しています。これはそっくり交換ということになるでしょう。長さはノーマルと同等でした。
 リヤはリザーバ付きのショック単体なのですが、ノーマルより30mmぐらい長い。そのまま付けては姿勢がおかしくなります。



 そこで、スイングアームも交換します。
 これも中華製ですが、一応アルミです。ホンダモンキー用基準で16cm長い、というもの。

 ノーマルのスイングアームと比較すると、ほぼ同じ長さなのでこれで合うでしょう。
 問題はショックの取り付けで、ノーマルはアーム上部にブラケットがあります。これでは長いショックだと相当角度が付いてしまいます。
 アルミ製はアーム下部にブラケットがあるのですが、このままでは位置が低すぎます。



 そこで、ブラケットを切り落としてしまいました。
 そしてアルミで新しいブラケットを作ります。



 ショックの通る穴も小さかったので削って広げました。
 激しく切った貼ったを繰り返してなんとか収まりました。



 余談、中国製のゴムは品質が悪い。すでにノーマルのブッシュはこんな具合です。



 新しいリヤ回りをフレームに装着します。
 少々車高が下がった様ですが、もともとの姿勢が尻上がりだったのでこれで良いでしょう。



 リヤが出来たらフロントです。
 ノーマルのサスペンションを取り外します。

 ついでにフォークをバラしてみたら、スプリングの硬さ調節のためにカラーが入っていました。カラーを外すと延びきらないのです。その反面、1Gでの沈みを押さえているので反発も強くなりすぎており、伸び側でガツガツ当たりがでているのでした。

 ところでこのカラー。
 左右で太さが違いますけど・・・これぞ中華クオリティ。



 中華クオリティはそれだけでは無い。
 ステムベアリングがガタついていたのは知っていたのですが、原因はこれだ。

 下のベアリング、レースが2階建てです(汗

 こんなもんベアリングにならないでしょうよ・・・



 ノーマルの車軸は12mm径でした。この手の大きさだとほとんど12mmだと思います。
 ところが、FastAceは15mmの車軸が使われています。

 これが難問です。
 前輪に使われていたベアリングは6301規格でした。このベアリングは外径が37mmあります。  内径15mmのベアリングに入れ替えたいのですが、外径37mmがありません。そうなると内径を合わせて外径の小さいベアリングに外輪カラーを入れるか、外径を合わせて内径の大きいベアリングに内輪カラーを入れるかの選択です。

 いろいろと検討の結果、ベアリングの外径37mmを守った方が無難だろうという結論に達し、6904規格を選定。外径37mmで内径が20mmとなります。
 63系と69系では大きく耐荷重が変わります。普通に考えれば69系では耐荷重が落ちる。しかし、内径が大きくなるとそうばかりではなく、6301と6904ではさほど大きな差にはなりません。もともとミニモトのサイズで6301はオーバークオリティとも考えられるので6904で問題ないでしょう。
 内径20mmと15mm軸を合わせるにはカラーを使いますが、肉厚2.5mmとれますから難しくありません。幸いベアリングの幅も3mm小さかったので、その3mm分で肩当てを儲けることもできました。



 オイルシールも問題なく付き、前輪の15mm径化は完了です。



 フォークに組み込んでみます。うまく付いていますが・・・



 なんと、三つ叉に組み込むとタイヤが干渉します。

 これには複合的な要素がありました。
 FastAceの三つ叉は、左右のフォークピッチがノーマルのものより狭くなっていました。
 そして何より、この車両に使われていた前輪が最大の問題でした。

 90/100−14

 これ、80ccクラス用の後輪です。

 何か曲がらないバイクだなあと思ったんだよな・・・



 このミニモトのホイールサイズは14インチ/12インチで、60ccクラス用です。
 そこで、2.75−14を入手。一般的には2.50−14ですが・・・まあ中華ですし。

 ノーマルホイールの幅が広すぎて60mm幅系タイヤには使えません。そこでホイールごと入手したのですが、その際にFastAceを採用している車両のものを選びました。それならば15mm軸径に合っているのでそのまま付きます。



 このサイズならば干渉しません。2.50のハイブロックタイヤでも大丈夫なクリアランスです。



 他にも問題が。
 ステムの規格が少し違いました。

 付属していたテーパーローラーベアリングは22.5mmと22mm。これはこれで良いのですが、なんとステムシャフトの下側ジャーナル部が23mmで入りません。また上側の22mmベアリングは外径が大きくフレームに入りません。
 これは、モンキー用のチューンナップパーツでテーパーローラーベアリングが出ているのでそれを用意しますが、内径22.5mmと24mmがセットです。24mmは隙間ありすぎです。

 仕方なく、22mm部分に22.5mmベアリングを合わせることに。

 ステムシャフトがアルミ製でした。少ししか回りませんからこれで良いのでしょう。そこで、アルミテープを巻いて22.5mmに近づけます。
 上下ともに22.5mmを使うことになり、23mm径の部分はカラーを入れてしまいます。FastAceはステムシャフトが長いのでこの方が好都合です。



 ステムシャフトのネジを見ていたら、上から押さえるだけの長さしかありません。
 いかにフォークを割り締めでしっかり止めたところで、ネジを締め込めばベアリングのクリアランスが曖昧になるでしょう。

 一般的にはベアリング上下をナットで適切なクリアランスに締め、トップブリッジを間に入れてロックナットします。
 そこでその手が使えるようにトップブリッジを薄く削り、ナットをもう一つ用意します。ここもクリアランスをアルミのカラーで合わせました。ノーマルフレームのステムホルダー部が短いのですね。



 さて、ブレーキを付けなければなりません。

 このバイク、制動力に問題を抱えていました。
 前輪があまり効かず、後輪は瞬時にロックする。結果的に甘いフロントしか使えない。

 その原因はブレーキキャリパーの大きさにあります。

 贅沢にも前後ディスクブレーキなのですが、フロントのキャリパはピストン径がとても小さい。そしてリヤはとても大きい。これではバランスが悪い。
 そこで前後のブレーキを入れ替えることにしました。

 リヤのスイングアームは実はドラムブレーキ用でした。ここはキャリパサポートを車軸にフローティングとすることでなんとか取り付け完了。



 しかしフロントは大問題。

 どうやってもこの大きなキャリパーが付かない・・・



 いろいろと手持ちの部品を合わせていたら、ブレンボキャリパが取り付けできそうです。

 ニッシン系のキャリパーは、2ピストンの中間にスライドピンがあります。これが邪魔になる。
 ブレンボはそのスライドピンが10mmほど下側にあるので、ちょうどフォークの形状に合う形になっていました。



 ただ、そのままでは付かない。ネジ穴は合いませんし下に長すぎます。
 さらに奥の方がディスクに干渉して寄せられません。

 この際です。どうせ死蔵している部品ですから。削りましょう。切りましょう。穴開けましょう。



 はい、取り付けました。

 問題はまだまだ続き・・・

 キャリパーが大きくなったのでマスターがノーマルでは小さすぎます。ピストンが戻りません。
 ここまで来たらやるしかありません。マスターも交換です。RM125用のマスターをこれまた死蔵してましたからこれを取り付け。

 ブレーキホースが合わない・・・

 バンジョーの径が違います。
 ここまで来たらやるしかありません。ホースも交換です・・・が売ってるのはメッシュだけです。

 斯くして恐るべきフロントブレーキシステムの完成です。



 おっと、忘れてはいけません。

 最初に問題になったのはチェーン外れですね。
 チェーンガイドが必要。そんなもの売ってません。作るしかないでしょう・・・

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