森林限界を超えて
「坊主山」とか「毛無山」とか、そんな名前の付いた山がある。
その名からイメージする通り、上の方に木の生えていない山をそう呼ぶ場合が多いようだ。
木々が生えるには気温やその他諸々の条件があって、その条件の限界を「森林限界」と呼ぶ。
森林限界のある山、ということで、それらの山は信州などに多い。
長野からほど近い須坂市から、群馬県の万座温泉まで、毛無山を越えるルートがある。
そのルートは上信スカイラインと呼ばれ、上州(群馬)と信州(長野)を結ぶ意である。
上信スカイラインは舗装の快適なルートだが、それと平行して、とっておきのダート林道がある。
湯沢林道はダート区間13km以上ある、本格的な山岳林道だ。我々オフローダーは迷わずこちらを選んで良い。
ルートの入り口はわかりやすい。ゴルフ場の入り口になっており、上信スカイラインの冬季通行止め看板が多く立つ場所でもある。
しばらく舗装路面が続くが萎える必要はない。しばらく待てば最上級のダートが待っているのだから。
順調に高度を稼いでいく林道はしかし、「急」のつくものが何もない。きわめて安定したグリップの良い路面、見通しの良い緩やかなカーブ、上り坂もきついところはない。
私自身、この林道は2度目になる。1度目は、50ccのストリートマジックでのこと。2度目の今日、装備重量200kg近いF650での再訪。いずれもロードタイヤに等しく、足も動かない車体。そのようなダートを走るのに最適な車両でなくても、十分に走らせてくれるのがこの林道の美点。
それだけではない。ここへ秋に訪れることが最高の幸せ。
青い空と紅葉のハーモニー。
湯倉洞窟なる看板に惹かれて、山道を歩いてみる。
本来山村の人間である自分にとって、山のシングルトラックを苦にするものではない・・・もちろんバイクではなく歩きでの話・・・のだが。
ま、決してお勧めしません(笑)
何せ、ロープがあちこちに張り巡らされた急なルートの連続で、少なくともオフロードブーツとプロテクター、といった装備での入山はやめた方が良いと思われます。
結果的にここまでは来たのだが、この先どれだけかかるのかがわからなくなり、ここで断念。上りより下りが難しいのは山歩きではよくあること。
林道に戻って再び快適なダートランを堪能するうち、万座峠に到着。湯沢林道はここまで、上信スカイラインの舗装道路に合流する。
山頂が見えてきた。
手元の地図を開いてみれば、群馬県側は一般車通行止めとある。
その地図ではダートの表記でなかったため、バスでも走らせているのか?と思ったが。
群馬県側はダートが続いていた。危険につき一般車両の通行を禁止していたわけだ。残念ながら、ここから先に進むわけにはいかない。上信スカイラインは大前まで続く県道(両県別個の県道になるのだろう)扱いだが、このダートも大前までは続いていないようだ。
たとえ道路が大前までつながったとしても、それはダートとしてではないだろう。
リフトの跡があった。過去にここはスキー場として使われたことがあるのか。スキーフリークで100カ所以上のスキー場を渡り歩いた私の経験の中にも存在しないものだった。
そして、毛無山には木々だけではなく、何もなかった。
湯沢林道の他にも、毛無山へ昇る林道がある。
山田温泉からの山田入林道がそれだが、ここは今、「当分の間」通行止め、となっていた。
このロケーションの通り、断崖絶壁を走る林道で快適さは予想できるだけに残念だ。
もうすぐ冬が来る。
紅葉は急速に色を失い、白一色の季節が来る。残り少ない色彩豊富な時期を、バイクと一緒に楽しんでおきたいものだ。
目次