File36 かしまる君
「怪しい軍団が行く」で書いている様に、チェーン交換が必要になりました。
BMWなどと書いてあるバイクではあるものの、その実態は・・・ということで、この車体はごく普通のチェーン駆動が使われています。
排気量の大きな車両は、Oリング入りでシールされたチェーンが使われることが多い。
用意したのは、ごく普及タイプのチェーンです。RKの520XWを使用しました。シングル車の場合はもう少しランクを上げよ、とありますが、実は少々くたびれてきたスプロケットのこともあり、短命で終わるだろうと思われる今回のチェーンは、廉価なものとしました。
Oリングというと断面の丸いものを浮かべますが、このチェーンはいわゆる「Xリング」を使用しています。断面形状がX字型になったものです。
チェーンは最初からエンドレスになっている訳ではありません。それでは装着できませんから。
チェーンは内側のリンクと外側のリンクが交互に接続されており、必ず偶数リンク数となります。(機械的には「オフセットリンク」を使用して奇数リンクにすることは可能ですが、引っ張り強度面に難があるので、こうした駆動系には不向き)
こうして内側のリンクで両端を切っておけば、外側リンクを1コマ使ってつなぐことができ、それによって1本のエンドレス状になります。
この「つなぐための外リンク」は、通常のリンクと同じというわけには行きません。
中型車までの場合、こうした継ぎ手が使われます。
これは差し込んでクリップで抜け止めをするものです。
このタイプは手軽で作業性が良く、特殊な工具を使わずに短時間で交換が可能ですが、強度的に他のリンクと差があり、動力の強いものには向きません。
強度を必要とするOリングチェーンなどは、かしめて使うタイプの継ぎ手が使われています。
この「かしめ」には、特殊な工具が必要になります。
おっと、その前に。
今バイクに付いている古いチェーンも、この様なかしめタイプ・・・ですよね?
そうなると、切る必要があります。
切るだけなら、こうした簡単な治具があります。
ボルトをねじ込む力を利用して、ピンを押し出すものです。
これはしかし、ターゲットとなっているのは250ccクラスに使われるOリングなしの520サイズチェーン用のもので、高強度なチェーンを切るには力不足です。
そこでこの「かしまる君」の登場です。
この工具は、チェーンの切断、リンクはめ込み、ピンのかしめができるようになっています。対応サイズは520のほかに530までが可能です。
一般的なボルトより径が太くピッチの狭いねじを使用しており、ねじ1回転あたりの押し出しは少ないですがそれだけに強い力が出せます。
そのため、その強い力は切断だけでなく、かしめの際にも十分な圧力を発生させることができる様になっています。
分解してみるとこれだけの部品で構成されています。この組み合わせを換えることで、切断からかしめまでに対応します。
実は、この工具は13000円ほどします。
チェーン交換の工賃は、一般のパーツショップでは1500円程度で行ってくれるところもありますから、ライフサイクルを考えれば、こんな高価なものを買う必要は無いでしょう。ショップ任せでかまわないと思います。
これを買ったのは、自分の職業的な興味が大きく、実働は到底減価償却できるものではありません。
左がリンクを圧入する時の構成、右がピンをかしめる時の構成です。
さあ、この工具でチェーンを交換してみましょうか!
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