第30話 50円のカステラをほおばって

 「キャンプしましょう」

 軍団からお誘いがかかった。
 どうにも仕事が佳境にあり、土曜日を休むことは出来そうにない。キャンプは参加できないが、林道は走りに行くよ、と返答していた。
 ところが当日になると、天気が崩れたためにキャンプは中止、予定していた面々は皆日曜日に林道へ集まることになったようだ。それなら会えるかもしれない。

 先々週、そこへ行くつもりだった。
 やや天候が不安であったのと、それ以上に長距離ゆえ頼みの綱であったF650のエンジンがかからなかったのだ。5月以降悩まされているオーバーフローがかなり悪化し、この夏の暑さでガソリン駄々漏れ状態が加速していた。
 かぶってしまったプラグを古いものに換えてなんとか始動したが、アイドリングしようとしないのでしばらくアクセルを大きく開けたまま低ギヤで走ることを余儀なくされた。

 いつもの四日市東ICから東名阪に乗るが、とりあえずガソリン入れようとSAに入る。



 18.8リットルって・・・
 F650のタンクは確か19リットル。多少余分に入るとしても、ほとんど残っていなかったことになる。前回乗ったときに、確かに最後はリザーブに入った。しかしそれから2ヶ月少々、その間にほとんど抜けてしまったわけだ。
 とりあえず走行中は漏れることもないので、先へ進もう。動かなくなったら?それはそのときに考えよう。



 延々と高速道路を走って、播但道から山へ入る。
 林道の入り口にたてられた標識は、一般車の通行を抑制する一文の上に、ガムテープで目隠ししてあった・・・様だ。剥がれてしまっているが・・・
 通ってはダメなのか、良いのか。

 この峰山高原にあった簡保センターなどは、最近閉鎖されてしまった。それでもここが観光地であることには変わりなく、さらにダートの林道とあってはバスだけ通行可能、とかにするのも何だ。そりゃ通っても良いのだろう。



 水飲み場で一服した直後、前方から軍団の面々が走ってきた。
 今過ぎたばかりの水飲み場で水を汲んでくる、というので、先に展望台まで行くことに。



 ここは以前にも訪れている。ストリートマジックを積んで来たものだった。
 この界隈の林道は広く平らで見通しも良い。F650やストマジでも安心して走れるが、本来走れるバイクで来ればもっと楽しめるのだろう。日帰りで来るには少し距離があるので、軽量車では訪れることがなかった。



 皆が戻ってきた。



 久しぶりに多くのオフロードバイクを見たように思う。
 CCR同様に、捜し物の方も人出が少なくなってきたと感じる今日この頃。



 集まってしまえばいつものように時間が過ぎる。
 あまり林道でおやつや弁当を食べない私は何も持っていなかったが、皆さん準備がよろしい。

 なによりのヒットは、50円のカステラだろうか。



 お約束の集合写真など撮る。
 天候はなんとか持ちそうだが、ここからまだ林道を走るという仲間たちとは行動を別にすることにした。
 もちろんバイクの性格上、彼らと同様に走ることが難しい、ということもあるのだが、もっと根本的な問題もあった。

 冒頭のキャブ問題以外に、問題点をひとつ抱えていた。



 走行距離が進んだために、チェーンが限界に来ていた。強く張るとピッチが狂って歯飛びする、ゆるめると横ブレも加わってあちこちに擦る、という状態で、早急に手当が必要だったのだ。
 このまま高速をひとっ走り(アクセルが一定し、さらにチェーンに遠心力がかかる高速走行ではわりと安定していた)、ディーラーで部品を発注してこようか・・・

目次

inserted by FC2 system