File42 事実上「営業」となった栃尾温泉

 奥飛騨温泉郷は露天風呂が100カ所近くあることで有名。大規模な施設はないものの、各宿がほとんど露天風呂を所有しており、それらはどこも入浴のみの利用も可能というもの。入湯手形にて巡ることも出来ました。
 そんな奥飛騨温泉(平湯・新穂高・福地・中尾・・・などなど)の中でも、「露天風呂と言ったらここ」と言われていたのが栃尾温泉です。



 神岡から新穂高へ続く県道の脇、川原に作られた露天風呂は、その野趣あふれる佇まいで人気を博していました。
 数年ぶりに訪れたその栃尾温泉はしかし、大きく様子が変わっていました。



 ・・・この日、バイクではなく車での訪問だったら、深夜に来ようと思っていたのですが・・・
 これまでもここで野営する車が多かったですから、その締め出し、ということか。



 もともと、この温泉は利用者が寸志を寄付するものとしていたもの。「利用させていただ御礼に」、というのが「志(こころざし)」であり、それは各自の気持ちの範囲であるもの。
 チップの習慣のない日本ですが、この「こころざし」はそれにあたります。
 確かに、習慣がないとチップをどれだけ払えばいいのかわからないもの。たいていの場合は1コイン、ということになり、100円が多かったのでは?

 ここに、200円を「こころざし」として入れよ、とあります。
 これは既に「こころざし」ではなく、「料金」ではないでしょうか?

 200円という額の設定をとやかく言うのではありません。500円でも1000円でも、それがそのサービスに相応するのであれば払うわけです。世間には2500円などという入浴料を取る温泉施設もあるのですから。
 それらの施設は、「営業」しているものです。

 この温泉の形態は、これまでそういった施設とは違っていましたが、事実上それに近づいたものとなった、と見るべきかも知れません。



 「栃尾温泉の共同露天風呂」は、何もないところだった。脱衣場と、混浴の湯船がひとつ。周りに囲いも何もなく、どこからも丸見えであったと同時にそれは開放感たっぷりの湯であった。

 この地を整備し始め、湯船が増えて分湯され、「荒神の湯」という名前が付き、立派な囲いが出来た。トイレや広い駐車場を作った。
 整備にかかった費用もかなりのものでしょうし、清掃をしっかりと行うようになったのでしょう。

 ボランティアでやってもらう必要はありません。
 一線を引いて、正式に営利施設としてやってもらえばそれで良いと思います。
 その方向へ進むのなら、それなりのレベルも要求されますが。すでにその方向へかなり寄っている、と言えるのではないでしょうか?

 利用時間に制限が出来たこと、料金が決まったこと(現時点では「こころざし」ですから強制力は無いと思われるが)など、ここは以前の栃尾温泉共同露天風呂ではなく、荒神の湯になったのだ、と思います。

 ここの魅力は決して「無料湯」であったことではありません。
 今後魅力を持ち続けることが出来るかどうかの指標は、これまでの人気の秘密(魅力)がどこにあったのか、ということになると思います。

 残念ながら、私の最も好きだった温泉は、そのリストから抹消されることになりました。

目次

inserted by FC2 system