第28話 約束の地

 なんだかんだ言いながら某誌に深く関わっている。
 主催者などという立場になったこともあったがそれも昔のこと、今は気ままな参加者・読者として。義務のように走り回っていた頃とは違い、行けても行かないことも増えてきている。

 夏の始まったある日に手にした某誌には、葛城山のエリア紹介があった。


 葛城山。


 北に木賊があるならば、南には葛城。
 某誌の「林道祭り」で集結した場所であり、当初の怪しい軍団の面々のほとんどが初顔合わせになった場所でもあった。



 葛城山へは24号線側からのアクセスと阪和道側からのアクセスが可能だが、阪和道岸和田から牛滝林道を経由するのがもっとも簡単だ。
 牛滝林道入り口に出来た温泉施設は盛況で、当時ここが存在していれば皆こぞってここまで来ていただろう。



 牛滝林道は以前から完全舗装だったが、その周囲の林道はまだダートが残っていた。
 そんな林道も徐々に舗装されていき、ダートが残る林道は数少なくなってきた。



 葛城山頂の名物小屋には仙人と呼ばれるご主人が。ここはキャンプ場になっている。
 ここはまたトライアルライダーが集まる場所でもある。

 「林道祭り」のあと、「怪しい軍団」もここで何度かキャンプしている。ここでも以前に取り上げたこともあったか。



 実は葛城山に何があるわけでもない。林道の少なくなった今、オフロードライダーにとっての魅力もやや薄れてきている、様に思う。
 今の魅力としては、展望台から見る関西空港の夜景か。この日は天気が冴えずにその影を見ることは出来なかった。



 「林道祭り」が行われたのは山頂のキャンプ場ではなく、一段下がったところにある駐車場だった。
 当時で130人ほど集まっただろうか。今見ると広い会場がバイクで埋め尽くされていた。

 原付で2日かけて東京からやってきた女性もいた。九州や東北から駆けつけた猛者もいた。
 別に何があるわけでもなかった。某誌の呼びかけに集まってきただけだった。今でもキャンプ会が開かれると当たり前のように集まってくる彼らの元は、こうした「約束の地」から始まっていた。



 そして「怪しい軍団」の始まりがこの場所だ。
 某誌が核としての力を失い、面々も地方に散ったり歳を重ねたりして集合の必然性も減った。今でももちろんキャンプ会を中心に集まっているが、以前の様には行かない。

 その某誌は今年、復活への道をゆっくりと歩き始めた。
 「約束の地」が再びその効力を発揮する日がくるのかはわからない。そうしたとき、またそこへ集まることになるだろうか。

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