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今年の桜は例年よりも早い時期に開花が始まった。

平均的に言うと、学生ならば入学を迎える頃に

辺り一帯に満開の花を咲かせているはずなので、

ようやく春分を迎えた頃というのがいかに早いか良くわかる。

この時、首都圏ではだいぶ進行したものの、

関東北部は例年並に近く、ちょっと遅れ気味だった。

そこで今回は東京都内を縦横無尽に走り抜け、

桜の咲く知られる場所、

そして知られざる場所を散策してみることにした。


出発日の群馬県内は、ようやく開花宣言の出た日。

対する都内は、下手すれば5分咲きとかになっている。

天気は快晴とまで行かないけれども良く晴れた。

春の日差しを受けて、軽快に高速道路で南下する。

最初に向かったのは埼玉と東京の境目、

多摩湖こと村山貯水池(都立狭山公園)。

この周辺、2輪車通行禁止地域も存在する。

進入禁止の看板に右往左往しながら無事到着。

平日とは言え、沢山の人が訪れる。


そこから都道の『けやき道』、『芋窪街道』を経由して

国営立昭和記念公園へと向かう。

3つの町に跨ぐという広大な公園。

全部を歩くにはそれなりの時間が掛かる。

平地にある公園は桜の開花具合も早い。

気温は2時過ぎまで上昇し、

春というより初夏手前のような感覚である。

明日の天気は良くないらしい。

出来る限り今日のうちに巡りまわろうと決め、

先を急ぐことにする。


立川市街地まで出てから、

甲州街道(国道20号)を都心部へ。

途中東八道路に変更し、東芝を右手に見ながら

都立野川公園に向かう。

多摩霊園、武蔵野公園、浅間山公園が連なる。

時折吹く風が桜の花びらを散らす。

良く見ると、まだ咲いていないつぼみも多く、

同じ都心部であっても

これだけ差があるものかと実感する。


その足で吉祥寺へ進み、井の頭公園に向かうも

駐輪場を探せず、かと言って路上駐車は出来ないので

やむを得ず樹林帯をくぐるのみで通過。

青梅街道、千川通りから石神井公園に向かう。

公園付近の石神井川沿いには

『さくらの辻公園』という小さい公園がある。

石神井公園のある井草通りより

若干奥にある全長1kmにも満たない公園。

ゆっくりとした川の流れと桜が

都心部とは思えない周辺の雰囲気に馴染んでいる。


夕暮れに背を向けて、都心を貫き、

江戸川区まで進んだところで1日を終える。

小岩にあるYGH(ユースゲストハウス)で宿泊。

翌朝7時には出発。しとしとと雨が降り続いていた。

小岩の大通りは柴又街道。

折角なので帝釈天によってみる。

普段良く見る賑やかな様子はまだ見られず、

境内付近の小売店もようやく仕度始めといったところ。

今日の天気の回復を祈願して今日の出発とする。


小岩から国道6号で再び都心部へ。

言問橋で隅田川に差し掛かる。

春の歌のひとつ『』にもある隅田川の桜は、

雨の影響か、少し寂しい感じがした。

言問橋周辺にある隅田公園には、

川を覆うように桜が植えられている。

この中には歩行者専用の『桜橋』がある。

昔から桜の名所のひとつである隅田川、

その近年の象徴として、この橋の存在がある。


隅田川を後にしつつ、ちょっと遅れた朝食。

天気は相変わらずだが、

合羽無しでも居られる程度なので、

沢山の桜がある公園まで行くことに。

そしてたどり着いたのは、

都内で人出が最も多い上野公園。

列車の発着点、上野駅の脇にある。

それ故に近隣よりも観光客色の強い場所でもある。

桜並木の脇で駅構内で買った

弁当で春の雰囲気を楽しむ。


上野駅から国道17号起点に向かい、帰路につく。

しかし途中で国道を外れてしまい、ちょっと迷い込む。

地図を見ながら現在地を把握する。

どうやら板橋区の滝野川周辺に居るらしい。

先に進むべく狭い住宅地を走ると、

河川に鯉のぼりが掛かっている姿を見かける。

橋の袂に『鯉のぼりの提供を・・・』と書かれた張り紙を見る。

桜の季節に合わせて、こういった事をしているらしい。

ちょっとした出来事が思わぬ展開になった。


帰路は県内に戻るまで終始雨の1日になる。

自宅周辺の桜はちょうど見頃になった。

ほんの僅かな季節のズレが、良いタイミングになった。

現在、首都圏や関東圏では桜はすでに時期を過ぎ、

今ごろは東北や北海道が開花という頃だ。

春の訪れを示す桜の花。

例え自然の乏しい都会であっても、

季節の移り変わりを知ることは出来る。

もう暫くすれば、賑やかな新緑が夏を知らせてくるはずだ。

文・写真 山本賢史


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