鯨定食を食べに行く

 コンスタントに更新したいと思いつつ、8ヶ月ぶりとなってしまった第2回目のぶらぶらツーリング。しかも今回は、南房和田浦で鯨定食を食べて、安房勝山でお土産にカジキの塩辛を買うという、素晴らしい目的があるのだ。去年末に雑誌で読んで知ったのだが、それ以来、気になって気になってたまらないでいたのだが、春も間近という3月7日行ってきました、南房総クジラカジキツーリング。うまかったぞう。
 今回は立ち寄る場所が2ヶ所も決まっていたので、地図を見ながら、おおまかなコースを考えた。鯨定食は南房総の外側、カジキ塩辛は内側。カジキはお土産だから鯨定食より後。なので、まずは千葉県を横断して外側に抜けてから、湾岸をぐるりと館山を通って内側へ戻って来るパターンに決定。我ながら完ぺきな計画に、旅立つ前からコーフンの前夜なのであった。
 タンクバックと小型クーラーボックス(湯沸し隊ステッカー付き、ワタシの旅の土産はなまものが多いので、小型クーラーボックスは必需品なのである)をバイクに縛りつけ、旅の安全を祈る儀式のようにたっぷりとエンジンを暖機する。6時22分、中野富士見町を出発。前回に比べると2時間近くも早い旅立ちに、この旅への思い入れの程が伺える。何としてでもお昼に鯨定食を食ってやるという、食い物が絡むとこうも違うものであろうかと、自分でも驚いてしまう。
 新宿を抜け、靖国通りを進み、国道14号(千葉街道)に乗り千葉県に入る。そのまま下道を進み、道は16号へと名を変える。そのまま更に南下して、市原市に入り国道297号(大多喜街道)へ左折。このまま走れば、千葉を横断して太平洋側の勝浦へ抜けて行く。
 297号に入ってから暫くすると、道も徐々に空いてきて走りやすくなってきた。このまま行けばどんどん走りやすくなるのかなぁ、などと考えつつ走って行くと、米沢という交差点で「右折県道81号、高滝湖、高滝ダム、養老渓谷」の案内を発見。一気に勝浦に抜けるのを止めて、ダムとやらを見に行くことに。
 殆ど交通量の無い県道81号を高滝湖へ向けて5キロも走るとすぐに着いてしまった。覗き込むと、想像していたよりもこぢんまりとしていて、周りも遊歩道風に護岸してあって、ダムの上を渡った先では地元の御老人達がゲートボールで遊んでいるという、のどかなものであった。なーんだ、と思っているとワタシが見ていたのは、湖のほんの一部であったことが解り、どーもスミマセンと能書きを読んでみると。1990年4月に373億円を投じて完成した多目的ダムで、総貯水量約14.300.000立方メートルと県下一を誇るとのことでした。県下一ですぜ、旦那。 高滝ダム
奥に見えるのが千葉で一番デカイ高滝ダムの水門。周りはキレイに護岸。
DJEBEL250XC&ME
湖をバックに疾走するふりをしているDJEBELとワタシ。
 旅で見つけた「1等賞」シリーズ第1弾千葉編その1は高滝ダムであった(突然シリーズがスタートしてしまった、どうしよう)。
 でもって、この湖ではバス釣りも盛んらしく上流の養老渓谷方面まで行くと、護岸も無く、ナカナカにいい雰囲気らしいです、見てこなかったので実際は不明ですけど。
 ダムを後に養老渓谷へと県道81号をバイクは走り、いつしか道は県道178号へと名を変える。緩やかなワインディングと渓谷の眺めを楽しんで行くと粟又ノ滝に出くわした。房総の魅力500選にも選ばれているこの滝は、高さ約30メートルでなんと県内最大という名瀑だそうで、階段状に傾斜した岩盤の上をおよそ100メートルにわたって清流が滑り落ちてくる、養老渓谷第一の景観なのだ。恐れ入ったか。わはは。以上は滝を見下ろせる場所に着いていた案内板に書いてあった物だが、実際下まで急な坂を歩いておりて見てきた感想は、割りと小さくて、お上品な滝であった。 粟又ノ滝
養老渓谷第1の景観、粟又ノ滝
 しかしながら、旅で見つけた「1等賞」シリーズ第1弾千葉編その2は粟又ノ滝なんである。
 くねくねとバイクは走り、県道178号から県道82号へ、漸く海が見えた。予定していた勝浦より10数キロ下った、天津小湊に到着。海岸沿い道へ出る最後のトンネルをくぐろうとしたとき、鼻先をかすめた干物の匂いに、反応するようにハラがへってきた。時計を見ると、11時を少し回ったところだ。実際トンネルを抜けた先には、干物、お土産の類いの店が並んでいた。恐るべき誘惑。このままワタシは、これらウマソーな食い物の誘惑に負けずに鯨定食までたどり着けるのだろうか。
 御存知鴨川シーワールド辺りまで来ると観光客目当ての「地魚回転寿司、ネタで勝負」的看板が多数出現。ワタシの心をくすぐる。しかしここで負けるわけには行かないのだ、何と言っても、今回の目的が達成できなくなってしまう。
 唇を噛みしめながら、涙をこらえ、鯨定食を目指す行く手に「太海フラワー/磯釣りセンター」なる怪しげな観光施設を発見。「フラワー」の方はまだしも「磯釣り」なる文字に興味を覚え、何気なく寄ってみることに。と、行ってみれば何のことはない、要するにそこには海の釣り堀があり、「遊ぶだけ」コースと「お持ち帰り」コースがあって、魚にそれぞれ値段がついている、まぁ、良くあるパターン。
 それにしても、誰も釣ってませんね。フラワーセンターの方はそれなりに、お客がいましたが・・・。  
磯釣りセンター
海の釣り堀。ううむ。
 まあ、平日ですからこんなものなんでしょうか、もう少し暖かくなれば花も沢山咲いて楽しめるんだろうなあ、それでも中庭には、キレイな花が咲いてました、やはり春はすぐそこ、なんですな。
キンセンカ
キンセンカ、鮮やかでした。
ポピー
ポピー、かわいらしかった。
ゴクラクチョウ
ゴクラクチョウカ、これは室内でしたが、何だか立派だったので。
 さてさて、頼朝の隠れ家伝説を持つ仁右衛門島など気になるスポットはあったのですが、思わずフラワーセンターで時間を使ってしまったので次回に回し、いい加減腹がへったので本日のメーンエベント、鯨定食を食うべくバイクを和田町「くじら家」へ走らせる、やはり、途中おおくの誘惑がワタシのココロを乱しそうになったが(すし屋が多すぎ!)、鉄の意志で「くじら家」まで、走り抜けた、凄いでしょ。
 南房総での捕鯨の歴史は慶長17年にまで遡るそうで、そもそもの捕鯨技術の発祥は鋸南町勝山といわれており、やがて技術の進歩に伴い房総各地に捕鯨が広まり、現在では和田町(和田浦)が捕鯨基地になっているのだ。と、聞いた。
くじら家
安房郡和田町花園127-3
「つ印くじら家」
 それを裏付けるかのようにやたら鯨料理の看板を見かけた。しかし、今回は出発前から、訪れるのは「つ印くじら家」とかたくココロに誓っていたので、店に着いたときには説明の着けようの無いカンドーが胸を締めつけた、いや、腹が減っていたので鳩尾が痛かっただけかも知れないが、兎に角、くじら家に着いたのである。
 「つ印くじら家」は、くじら加工食品を扱う物産店であるが、そのとなりに「くじら家」という、つ印くじら家直営の食堂がある。店に入ると先に来ていた同じくツーリング中のオニーサンに挨拶。千葉市在住の方で、ぶらりと立ち寄ったそうな。ツーリング中のライダー同士は、なぜか以前からの知り合いのようにさりげなく話し合えるものだ。
カツ定食
くじらカツ定食1000円(税込)旨!
 先に食事を終え、また何処へと走り去るオニーサンに別れを告げ、ワタシは「くじらカツ定食」1000円を食べた。他に一品料理で、尾羽、塩鯨、百尋、舌、珍宝などジュージツのメニューであったが、今日はカツ(次回はくじら海鮮丼に決めた)。そして、クジラ寿司があったので注文。1カン300円。これが、美味かった。ミンククジラの握りだそうで、柔らかで、ほんのり甘くて。もっと食べたかったが、定食が入らなくなってしまうのでがまんがまん。
 もう、ご飯はてんこ盛り、小鉢に椀、デザートまで付いてとどめにBGMは細川たかしであった。兎に角まんぞくまんぞく。肝心のカツは、うっすら醤油フレーバー(秘伝のタレなのだろう)で、柔らかくとても美味しかった。近いうちに必ずもう一度訪れることを約束し、隣でお土産に鯨肉をスライスして、秘伝のタレに浸け干物にした「クジラのタレ」塩味&醤油味をひとつづつ買って店を後に。
 次なる目的地である、安房勝山に向かうべくバイクを走らせるが、どうにも風が強くなってきて走り辛い。館山まで湾岸を国道410号を経て内側に入ろうと思ったが、あきらめてそのまま国道128号を行くことにする。と、鮮やかな黄色を惜しげもなく晒している菜の花畑があちらこちらに広がっている。全く、ホントにキレイであった。
 所々で、風車を見かけたが、あれはなんだったのだろう、次はちゃんと調べてこよう。
菜の花畑
 ぐるり回って、無事、安房勝山の魚竹商店にてカジキの塩辛を手に入れ、目標を達成したワタシは、後はゆっくり家路につくのみである。道すがら、内房の港や堤防をいちいちのぞいて走るワタシは、地元の方々にはさぞかし怪しく映ったかも知れないが許していただきたい。またいつか、この同じコースを別の目的で旅する日があるだろうが、その時も暖かく見守っていただきたい。ダートかと思い突っ込んでいった行った先が人様の家だったり、勝手にバイクで漁港に迷い混んでしまったり、迷惑をおかけした皆さんにおわび申し上げます。
 因にカジキの塩辛、凄く美味しかった。あつあつご飯に乗せて良し、そのまま酒の肴に良し。毎年冬の間だけ、保存料をいっさい使わず、カジキのワタ、キモ、塩のみで作られる塩辛。おすすめです。
 くじらのタレは、ビーフジャーキーが柔らかく、上品になった感じ、これも旨かった。
旅の内訳
くじらカツ定食1000円、くじら寿司300円、くじらのタレ(塩、醤油それぞれ)650円
カジキ塩辛1100円、フラワーセンター入場料600円
総走行距離320キロ、燃費29.23km/l(燃費のいい旅であった)

旅で見つけた「1等賞」シリーズ
高滝ダム・・・千葉県内で貯水量最大
粟又ノ滝・・・千葉県内で高さ約30メートルでなんと県内最大

文・写真 : 速水直樹


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