箱から出したばかりの真新しいヘルメットはXLサイズ。
シールドに貼られた保護シートを剥がし、頬パッドを厚手のものに換える。
作業ズボン(チノパンと言え --;)をはき、ライディングシューズに紐を通す。
ジャケットは要らないか。Tシャツにウィンドブレーカを腰に巻き、唯一穴の開いていないグローブを手に取りしばし考慮。
縁起は良くないが、仕方ないな・・・
ほぼ一ヶ月間、手を降れることも無かった。
部品の注文はしてあった(金まで払ってあった)が、取りに行くこともなく。
だけど今日。
過去、自分を林道へ・全国へと駆り立てたとある雑誌の発売を機に、もう一度初心に帰ろうか・・・と。
とりあえず走らせるための部品は手に入った。
相変わらず整備性の良くない車体に業を煮やしながら、ひとつひとつ部品を外していく。
破壊したメーターギヤボックスを交換、車輪を回してメーターの動作を確認。メーターパネルもぐらついているが、落ちることはないのでそのまま。
ウィンカーを取り付けようとカウルの中を覗けば、いくつも外れたコネクタ。そうか、時計が動かなくなったのは抜けただけか・・・
よく見ると右に少し歪んだカウル(左フルロックで当るんだな)の傷を、カッターナイフと400番のサンドペーパーで均す。
走らせてみるか・・・
新品のTourCrossStormを被る。シールド付きのメットなんて何年ぶりか。いかにも大きいXLサイズを選んだのは・・・
傷つけて使えなくなったヘルメットが、頭に馴染んだのは3年目。毎月毎週、西へ東へ走り回った頃からの相棒。
しかし今、頭に馴染むまで待つわけには行かない。
別に終幕を急いでいるわけではなく。
それとて以前のようには走り続けられないことも解り始めている。
走る目的を見失い始めていた若い頃のように。
狭い路地で前から来た車。
リヤブレーキを思いっきり踏んづけた自分に思わず苦笑。
そういえば、自動車学校ではリヤブレーキを一瞬先に踏む、と教えられた。止めることには自信を持っていた自分は、ほとんど聞いてなかったけど(笑)
「握り転け」なんて初心者の冒すこと、などと思っていた。
GSよりFunduroに惚れて抑えた最終型、今新型のABSにちょっとジェラシー。
そんな今日この頃。自信が慢心だったことに気づいたこの頃。
たった1ヶ月弱。
もっと長い間乗らなかったことが当たり前のように何度もある。
なのに、「ブランク」を感じている自分がいるのは何故?
速度を上げる。
夕日を背にした所為で、シールドに写り込む眼鏡のシルエット。メーターが真上から右側に傾く頃には少し揺れたバイザー。
左にウィンカーを出し、点いていることを確認しながら家への道をたどる。
明日の天気が持つのならば、走りに行こう。
見失っていた目的をひとつ見つけたあの頃のように、もう一度走り出そうか。
再び走り出す日・・・