File23 ブレーキ整備

 バイクのチューンナップといえばみんな、パワーアップや足回りにばっかり目がいきがちですが、地味だけど実際的に効果が高いのがブレーキチューン。パッドやシューのチョイス次第でがらっと変わってしまいます。またオイルラインなどの整備度次第でも大きく変わるんですが、普段目が行かない場所だけに、結構見落とされている場合が多いです。そこで今回はディスクブレーキのあれこれについて、すこしお話をしましょう。

○ブレーキの種類
ディスクブレーキに話を限定してしまう前に、二輪車に使われているブレーキの種類から。大きく分けて2種類に分かれます。1つはドラムブレーキ、もうひとつはディスクブレーキです。最近のほとんどのオフロードモデルの場合、フロントブレーキはほぼディスクが採用されています。設計がやや古い車種や旧車の場合、原付、またレトロ調のロードモデルには、コスト面やみためなどの理由から、ドラムが採用されています。

1:ディスクブレーキ
これはハブに取り付けられたローターを両側からパッドで圧迫し、その摩擦力で制動するというもの。放熱性・整備性に優れるものの、大きい制動力を得ようとするとガラ自体を大きくせざるを得ません。またそこそこの速度が出てるとコントロール性が高いのですが、低速ではガッツンと効いてしまい、なれないとコントロールにやや難があります。ほぼ全てのモデルでオイルコントロールが採用されています。

2:ドラムブレーキ
ハブの内側に制動機構が仕込んであり、ハブ内面を内側からシューが圧迫し、その摩擦力で制動します。自転車のリアブレーキもドラムですが、あれは回転する内ドラムをメタルベルトで圧迫しており、構造が全然違います。ドラムの利点は低速のコントロール性ですが、シューの交換などの整備性が非常に悪く、素人作業で新品のシューを使っても制動力がうまく立ち上がらないのは、このときの当たり出しなどの調整がうまくいっていないからです。しかしセッティング次第ではディスクに匹敵する制動力を得ることも可能ですが、これはダブルローディングタイプのロード用などに限られます。多くのモデルがワイヤーコントロールを採用しています。

3:インボードディスクブレーキ
1と2のいいところどうしを取ろうとして設計されたものの、整備性は悪いわあんまり効かないわで、あっつーまに廃れてしまったホンダのオリジナル。最近までゴールドウィングで採用されていたもの。これはハブ内部に取り付けられたディスクを内側から、油圧を使ってパッドで押し広げて圧迫、制動力を得ると言うもの。オフロードモデルでは採用されていません。

○ディスクブレーキの整備のツボ
 さてはてこのディスクブレーキ、ドラムと比べるとはるかにメンテナンスフリーと言えるのですが、やっぱり機械物だけに、整備しないと効かなくなります。まず日常での点検項目ですが、1:パッド残量、2:ブレーキフルードの色、3:ローターの磨耗度です。一番見落とされがちなが3番のローターですが、パッドが無いまま走ったりしてない限りは数万キロは持ちますから、あんまり気にしなくてよしです。パッドの磨耗については後述するとして、2番のブレーキオイルのお話。ブレーキオイルは他の油脂類同様、やっぱり劣化します。元々微妙に水分を含んでいるんですが、これがブレーキング時の発熱などで加熱され、そんとき含まれる水分などで酸化され、劣化していきます。劣化するとどうなるかと言うと、リザーバタンクの覗き窓から見える色が、黄色から黒に変わっていきます。茶色くなってる時点でかなり逝ってると思って間違いないでしょう。そうなると交換です。交換作業自体はバイク屋さんにお任せするほうがいいと思います。

 んでもってパッドのお話。パッドは使っていると磨耗します。どんくらい磨耗するかと言うと……

こんなくらいです。右は限界をはるかに超して使用してしまった分で、ここまで減るとローターを削ってしまいます。ここまで減る前にパッドを交換しないとダメなんですが、大雑把にわけて2種類になります。

1:セミメタルパッド
アスベスト系だったりする奴です。一昔前の純正パッドはほとんどこれですが、ブレンボの標準はセミメタル系です。パッドそのものがやわらかいので食いつきが良く、良く効くものが多いのですが、反面非常に磨耗速度が速く、また物によってはすさまじい量のダストが出ます。

2:シンタード
焼結パッドといわれる奴で、最近は多くの車種の純正がこれです。レバーの握りこみ量に応じて制動力が立ち上がるという感覚のものがほとんどです。磨耗速度が遅い反面、ローターへの攻撃性が高く、ステンレスローターでも結構な速さでちびっちゃいます。コントロール性が高いのでスポーツ走行向けかな?

自分の走行形態に合わせてパッドを選ぶ必要があると思います。距離を乗る人などは焼結パッドを使うのがいいですし、月に数度しか乗らないけど制動力はほしいって人は、それなりのパッドを選ぶほうがいいでしょう。ただ制動力のあるパッドとはいえ、タイヤのグリップを超えた制動性能は得られませんので、その辺も考慮してくださいね。

続いてオイルのお話ですが、ディスクブレーキのほとんどは、その動作に油圧ラインを用いています。ホース内部を満たしているのはオイルですから、もちろん他の油脂類同様に酸化します。酸化してくるともともと黄色だったのが、だんだん茶色くにごってきます。この濁りの原因ですが、たいていは水分です。水分が入ったところにブレーキングで加熱されると、あっつーまに酸化が進んでしまうんです。また加熱による変性も結構ありますし、こまめにリザーブタンクののぞき窓をチェックして、オイル交換するようにしましょう。オイルを変えるだけでタッチが変わることもよかります。ブレーキオイル自体にもいろいろとグレードがあり、DOTの番手が上がるごとに、性能はいいけど劣化しやすくなります。四輪だとDOT3が、二輪だとDOT4が主流ですので、DOT4を買っていれば問題ないと思います。純正で十分です。

次回は気が向いたら実作業などを描いてみたいと思っています。
文・写真 / 硯  崇

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