第七回 bの魔力

 いきなりで何なんですが。
 最近、車を乗り換えました。

 その車の金色のホイールからは、金色のブレーキキャリパーが覗いています。そしてそこに刻まれた文字・・・



 brembo社のブレーキには定評があり、以前から多くの車両に用いられてきました。そしてそれは、2輪/4輪を問わず、日本国内でも多く採用されています。日本車の場合、ある意味ステータス性を求めて採用しているような例も見うけられるのではありますが。
 その点、欧州車ではごく当たり前のパーツのようにして使われています。日本製で言えばSHOWAのパーツを使うような感覚でしょうか。

 bremboのブレーキは、決して強力なストッピングパワーを提供するという感じの物ではありません。どちらかといえばフィーリング重視という感じの効きをもたらせてくれます。



 オフロードに於いて要求されるブレーキ性能。
 ロックさせずに、それでいて確実に速度を落とす。急激な姿勢変化を与えないように、初期の食いつきは少な目に、握り込んでいくほどに効き目が強くなっていくような。



 オンロードに於いて要求されるブレーキ性能。
 オフロードとは逆に、初期からしっかりとした制動を提供することではないでしょうか。

 そして、いずれの場合も共通して要求されるのは、乗り手の意志につながるフィーリングだと思います。

 一口にbremboのキャリパーと言っても、それぞれ持ち味が違います。
 たとえばHusabergの使用している2ポッドキャリパーは、初期制動も十分に確保されていますが、ブレーキレバーの握りを加減することでピストンの加圧力が変わることを感じ取ることができます。ピストンを押しつける、すなわち強いストッピングパワーを求めるだけなら、油圧の力計算で出せますから作ることは難しくはないでしょう。
 しかし、bremboが優れているのは、「ピストンが戻ろうとする動き」がとてもスムーズなことです。すなわち、握って食いついた制動力を、ゆるめることでピストンが戻る、つまり食いつきを離しながらなおかつ制動力を確保しているという微妙な力加減がうまく作り上げられている印象です。

 Husabergに比べてオンロード指向、特に高速性能を求めたBMW・F650の場合は、それとは違った性格を与えられたキャリパーが採用されています。
 ブレーキを握ることでノーズダイブを大きく発生させられるほどの初期制動力を持っているかわりに、握り込んでいってからの制動力増加はあまり大きくありません。しかしこれも同様にピストンの戻り感覚は良く、決してロック性が高い物ではありません。

 蛇足ながら。
 冒頭の車、bremboのキャリパーに、ABSシステムが組み合わされています。
 そのため限界性能が感じ取れません。踏んでもロックしないわけで、微妙なコントロールによるブレーキングというものはこのシステムには存在しにくい様です。

 しかし、これは2輪の世界でも今後主流になっていくのではないでしょうか?
 事実BMWのR系などの車種ではABSが採用されているわけです。4輪に比べて「ロック=転倒」という危険の伴う2輪の場合、ABSの有用性は高いでしょう。
 そういった時に、bremboの微妙な力加減というのは、ABSシステムがコントロールする上で好都合な物でしょう。それはすなわち、ブレーキフィーリングの向上につながってくる物と思います。

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