〜事業中止になった木曽崎干拓地の行方は〜
干拓事業。
子供の頃に社会科で習ったと思います。
遠浅の湖海を堰で仕切って干上がらせることで、それまでなかった「土地」を作るものです。
従前からいろいろな地域で干拓による土地造成が進められてきましたし、今もいくつもの事業計画があります。
それらの多くは農地を作ろうというもの。
農地を広げることで食料を確保しようとしていた訳です。
しかし、昨今の米余り状態。
需要が供給量を下回ったことで、減反など農地の削減を行っているのもまた事実。それが現状。
そういった利用の目処が立たなくなった干拓事業がいくつもあり、その転換期に晒されています。
ここ、木曽崎干拓地は、三重県と愛知県の境にあります。政府の手により「農地」として事業が進められてきました。
しかし、ご多分に漏れずここも農地としての利用に”?”が付き、いろいろと折衝の結果、農地事業が中止されることになりました。
農地にならない干拓地をどう使うか。
事業主は、国です。よって、そう簡単に民間の手で何かを作るという訳にはいかないでしょう。
また、干上がったことによって「土地」になったとはいえ、元は海。その地盤は脆弱で、建物を建てるには向かない。
しかし、ここまで多額の費用をかけて造成した干拓地を、ただの荒れ地として放置していくことはムダに輪をかけていくことになります。
今年1月、三重県は、木曽崎干拓地のうち、三重県境内にある部分を国から購入することに合意しました。
まだ、利用のプランは具体化していません。
購入合意時の発表では、自然公園としたい、という一案が出されていました。
自然公園・・・
干拓地という性格から、ここは自然の土地ではありません。
人工によって作られた、不自然な土地です。
そこに「自然公園」を作る。
作らなければいけない、そんなものなのでしょうか?
干拓地を取り巻くのは高い堤防。
閉鎖された空間。外部から中を見ることが出来る箇所は限られています。
それでも近い将来、前に見える高速道路が木曽崎干拓地を横断します。
そのときに見える風景は、果たして荒れ地か、開発された「疑似自然」か。
今現在、木曽崎干拓地に入るには、この入り口しかありません。
ここからまっすぐに中央幹線道路が造られ、何本かの横道がクロスしている。ただそれだけです。
水に浮かぶ人工の土地。
ここに近代的な建造物が並ぶのならそれもシュールな世界かも知れない。
しかし、ここには葦の原が広がるだけ。
農地であるのなら何も疑問を持たない休耕田。
農地としての事業が開始されなかった今、ここはただの荒れ地。
平日は今も工事の車が入ります。それはしかし木曽崎干拓事業のためではなく、高速道路建設のための工事。
工事のない日曜日には、門は、閉ざされています。
しかし、その門には鍵がありません。
入ろうと思えば入ることは出来ます。しかし、それは不法侵入というもの。それを警告する看板も立てられています。
このあたりの一帯、木曽崎から鍋田干拓地、藤前干潟といったあたりは、野鳥の観察に来る人たちが多く訪れます。
そうした侵入者はあとを絶たない様ではある。今は、お目こぼしをいただいている状態。しかし本来は国の私有地(こういう表現はおかしいが)であり、妄りに進入することは出来ません。
ここへ入るか?
俺?
中に広大なダートエリアでもあるのならねえ(笑)
ただの直線舗装道路、入ったってしょうがないもの・・・