第9回

湖底に沈み天空を駈ける
それでいて通り抜けられない道

国道417号線

 もう何年になるだろうか?
 岐阜県の山深く、徳山村に巨大なダムが建設されることになった。徳山村は全面的にダムに沈むことになり、廃村が決まった。住民は岐阜市内などに移住し、村そのものも藤橋村に吸収され、徳山村はその存在をなくした。
 ところが、その後なかなか計画が進行せず、工事が進まないままになっていた徳山ダム。それが近年、本格的に工事を開始した。

 旧徳山村を走る国道417号線も、ダムの完成によって湖底に沈むことになる。
 この国道は峠を越えて日本海まで続いている・・・はずなのだが???



 国道21号線・大垣市から始まる国道。左手がそうなのだが、近代的で広く、交通量も多い21号線とくらべると、国道とは思えないぐらいの細道だ。



 このルートは山へ続く道。冬はスキー場群へのアクセスルートとなる。もっともほとんど河川敷を通るので、国道を走る区間はわずかだが。この先の信号を曲がると西美濃スキー場群、国見岳や揖斐高原といったエリアになる。
 林道も数多く、オフロードバイクにとっても嬉しいエリアだ。



 揖斐川を渡る。
 道は一旦国道303号線と合流する。どちらが吸収、というわけでもなかろうに、番号が若い303号線が生きてしまうのは力関係か・・・



 横山ダムで国道303号線と分かれる。ここからは信号もなくなり、交通量もまばらになる。
 途端に道も「山道!」という雰囲気が漂い始める。



 藤橋村から旧国道に入れば、藤橋城が現れる。
 ここは天守閣をかたどっているものの、中はプラネタリウムになっている。藤橋村には天文台もあるようで、プラネタリウムなど必要なのか?せっかく空気がきれいで空が澄んでいる地にありながら、映写機で写された星を見るものか。何か矛盾したものを感じる。




 資料館的な役目も持たせているから、全ての施設を有料の共通券で入場させている。城の中だけ見たかったのだけど、もったいないのでその他もろもろも見ておくことに。
 藁葺きの建物は涼しい。ここの座敷で昼寝をすればエアコンなど必要ないだろう。本当に自然の素材とは良くできた物だと思う。



 そのまま旧道を走ってみる。しばらく行くと、徳山ダム工事専用の道路になった。ここから先は厳重にゲートが掛けられ、守衛もいる。もちろん入って楽しい道でもあるまいし、危険な道であることは明らかなので、侵入できたとしても入ることはないけれども。
 今は工事用道路。この地はダム下流になるので水没することはないが、かつて国道として走ることのできた道が、この先で水中に消えるということは複雑な思いもある。



 「現在の」国道へ戻る。
 旧道から分かれて遙か上空を新しい道が走っている。トンネルを掘り、橋を架け。山裾を縫うように走っていた旧道と違い、山肌に着けた道。
 天空を駆ける道・・・



 トンネル内にダム中心線を示す看板があった。ここから地底まで何メートルあるだろうか?
 巨大なダムであることが容易に想像できる。できあがってしまえばその大きさに驚愕することもあるが、形のない今、それを想像するのは難しい事のはず。



 しかし、想像してみた(笑)
 この様な位置になるらしい。これは大きい・・・

 名古屋ローカルのアウトドア番組で、徳山村を取り上げたことが何度かある。
 このダムに沈む村。もうなくなってしまって久しい村。

 それでもここがいい、ここで暮らしたい、と帰ってきている人たちがいた。そうした思いでも今では過去となってしまった。すでに工事が始まり、通行が制限された道を通って村にはいることはできないのだ。



 ダム湖となる部分を過ぎれば、道は旧道に交わる。しかし、そのまま国道を・・・というわけには行かないのがこの道。
 岐阜/福井の県境付近は、国道が途切れてしまうのである。途切れた区間は冠林道が結んでいるので、福井県へ抜けるのに問題はない。

 気が付けば国道は林道に変わっていた。どこで変わったのかわからないほどで、徐々に狭くなってくることがそれと判る程度だ。林道と言っても舗装されているので走行に支障はないし、そのまま国道と言ってしまってもよいのではないか、という気さえする。
 国道、としての基準があるのかも知れないが、冠林道より程度の悪い国道をいくつも知っている。もちろん、ここを国道と呼ぶことで通行車両が増えるととても通れたものではなくなるのだけれど。



 細い峠を登りきればそこが県境だ。標高があるので吹く風も涼しく、しばし休憩とする。
 峠の石碑脇には、藤橋村とならんで徳山村の碑も建てられている。

 歴史を更新することのなくなった村。
 歴史の中に沈んだ村。



 峠を下り始める。山深く細道は続く。
 そして、また何事もなかったように林道は国道へと名前を変えていた。



 改良工事が進められていた。国道区間は徐々に拡幅されていくようだが、それ以上に県境を・・・
 もちろん、直接流動の必要がない2地域のために整備する必要はないだろう。今必要な地域だけを整備すればよい。それでいいだろう。
 では、なぜつながらない道を同じ国道として扱う?今の状態では管理がし難いのではないのか??



 通ってきたのは「林道」だったが、いくつか林道が枝分かれしている。
 そのひとつを走れば、結構奥深いことに気づく。数キロ走ったところで引き返す。



 林道が多い地域ということで・・・
 ここは、国道沿いにある「もくもくハウス」だが、7月号でレポートした「Tour de 福井」のスタート地点になったところだ。



 池田町(岐阜にも同じ名前がありましたね)から鯖江市へ。
 徐々に車の量も増え、都市の姿になっていく。



 鯖江市は、めがねの街。
 大きなめがねをかたどった看板を掲げたビルに近づいてみれば、めがね会館という施設。要は市民会館だった。日曜日で入館できず。



 鯖江から海を目指す。
 ここで国道365号線と交わる。地図上はこの先も国道417号線が続くことになっているが、標識は国道365号線になる。
 重複区間なのか、あるいは地図の間違いか。確かめたくて海を目指す。



 越前海岸にたどり着いた。
 結果、ここは国道365号線だった。

 これからもこの道が主役になることはないだろう。あるとすれば、徳山ダムが完成して物見遊山の客が通る時だけか・・・

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