第四回 ホンダ BAJAシリーズ
(89年〜)

 私の現在の愛車はホンダXR250BAJA。初期型の95年式を新車発売と同時に購入したので、もう5年も乗っていることになる。
 この「勝手にインプレッション」は自分の愛車等のことを詳しくレポートするのが普通なのだろうけど、XR−BAJAなんてあまりにも知られたバイク。今更これについて細かいことを語ってもしょうがないし、もしかすると間違った説明をしてボロが出そう。そこで、今回は「BAJAシリーズ」と範囲を広げて私見を書いてみたい。
 最初のBAJA、XLR−BAJAが発売されたのは1989年。その年にようやく中型免許を取得したばかりの自分は、当初ツーリングに使うのに便利そうなXLR−BAJAを購入するつもりだった。しかし諸々の理由で、迷った末に結局昔から憧れていたRZ250Rを購入してしまった。
 テント等キャンプ道具を積んでツーリングに出掛けること数回。しかしやはりオンロードマシンのRZでは自分のスタイルに合っていないことを痛感。わずか1年ちょっとで買い換えることになってしまった。もちろん90年式XLR−BAJA。ここからいよいよ私とBAJAシリーズの付き合いが始まったのだ。
 89から90への変更点はカラーリングのみ。89が出た時点で元車のXLR250もリアディスクに変更されているため、86からすでにかなり完成されていたXLRシリーズ自体に変更は無かったのだ。私がXLR−BAJAを購入したのはすでに90年も終わりの頃だったので、91年式から大きな変更がされるとかの情報が入っていないことを販売店に確かめ、結局カラーリングも気に入っていた現行車種を即購入することになった。その後年が明けてから少し後悔することになったのだが・・・
 XLR−BAJAのデュアルヘッドは、VFR400Zのものが流用されているらしい。角形プラレンズの35W/36.5Wが主流になりつつあったオフ車の中で、BAJA1000仕様車に似せたデカ目のスタイルはかなり異質なもの。当然仲間内でも賛否両論あったのだが、35W/35Wx2という圧倒的な光量でナイトランにはとても重宝した。バルブがE4球で、少し改造すればH4球の装着も可能だったため、私は右側のみ55W/60Wのイエローバルブに交換していた。これはしかしプラレンズには無理があったらしく、レンズの真ん中が少し膨らんでしまった。
 1991年、まずは嬉しいニュース、モンキーにBAJAレプリカが発売されるとの情報が入ってきた。まだ発売のずいぶん前にカタログを見せてもらったが、とてもかわいくて、BAJA乗りの心を揺さぶるスタイル・・・モンキーの乗りにくさなどはまったく考えず、思わずその場で予約を頼んでしまった。予想通り大人気で、販売店の方でも確保するのが一苦労だったらしいが、なんとかかなり若いフレームNo.のものを手に入れることが出来た。91年式、初期型モンキーbaja。現在でもセカンドバイクとして活躍、自分にとってはもっとも長い付き合いのマシンとなった。
 同じ年、今度はあまり嬉しくないニュースが・・・「大幅なモデルチェンジはない」と聞いていたのに、91年モデルは前後サスに大きな変更が施された。外観に大きな違いは見られないものの、サスストロークなどのカタログデータには違いが・・・詐欺だ〜!と騒いでみてもしかたない。とりあえず一度試乗させてもらったが、明らかにカチッとした乗り味に変わっていた。もともとがXLRに2kgもあるライトユニットを付けただけのBAJAは、〜90モデルでは重量バランスとサスセッティングが合っていなかったようだ。
 その後しばらくカラーリング以外の変更は無かった。Dio−bajaなんていうレプリカスクーターが発売されたり、XLRに125と200が登場したりはしていたのだが、いろいろと噂されながらも大きな変化は無かったのだ。
 しかし1995年、いよいよ大幅なモデルチェンジが施されることになった。それまでのXLRの名は捨てられ、レース仕様車であったXRの名がそのまま使われた「Super XR」。初期モデルはBAJAも普通のXRと比べてあまり変化の無いカラーリングとなったが、XLRと比べるとその中身の違いはかなり凄まじいものだった。90XLR−BAJAを乗り続けていた私は、迷うことなく初期型XR−BAJAに買い換えたのだ。
 新型はディグリーのような水冷DOHCになることも噂されていた。確かにセル付きにはなったのだが、結局は空冷、ドライサンプに変更されたのみ。しかしこれでもXLRよりは明らかに冷却効果が上がっている。カタログデータ的には馬力・トルクともに変化が無かったのだが、実際乗ってみるとパワー感は段違いだった。
 しかし燃費の悪さも強烈で、4st250単気筒なのに今までの最低記録は15(km/L)前後。最高でもツーリング時の30ちょっとで、滅多に30を超える事は無い。XLRがツーリング時だと40以上なのとは大違いだ。タンクは9.7Lとわずかに大きくなったが、その程度ではカバーしきれない欠点だった。
 その年のBAJA1000に出ていたXR680の仕様そのままに、ライトユニットを従来のフォークマウントからフレームマウントに変えたことで、明らかにハンドリングが軽くなった。ただ、更に巨大になったライトユニットは、前モデルと比べるとどうしても視界に異物があるように感じられ、慣れない内はダートでは少し不安を感じた。しかし35W/36.5Wx2のデュアルヘッドはレンズカットも良く、林道ナイトランでも不安が無いほどの強力な武器となっていた。
 コンペモデルに近い足周りは、アスファルトのワインディングでも攻めたくなるほど剛性と安定感があるけれど、普通の林道だと妙に曲がりづらい。開発関係者の話によると、モトクロスコースで走るとバッチリ決まる・・・らしい。確かに林道でもオーバースピード気味にアプローチすればいい感じに曲がってくれるようだ。しかしBAJAをツーリングバイクとして考えると、少し戦闘的すぎるように感じられた。
 その後、XRについてはほとんど変更が無かったが、BAJAについてはやはり少しずつ改良が施されていった。燃費の悪さを補うためにビッグタンク化された他、XRよりあえてサスストロークを短くしてでもシート高の低減とバランス取りを重視し、XRとは一線を画すツーリング向けバイクへと進化して行った。
(写真は藤原尚之さんの96XR−BAJA)
 2000年、排気ガス規制に対応した仕様でモデルチェンジしたXRシリーズ。この先どういう展開を見せてくれるのか?BAJA乗りの一人として注目していきたいと思う。

文・写真 / 河村 敬


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