第8回 渡るに渡れない・国道382号線

 地図を見て欲しい。
 海の向こうに同じ国道番号が続いているということがありませんか?
 これは、フェリーなどを国道の代わりに考えているものです。海峡を挟んで同じ文化が続く場合には良くあることですね。

 島国日本。それだけに島は多い。車の走れる大きな島にはフェリーも走り、国道が出来ている島もある。
 これらの島々を結んで、同じ国道番号が続いているところがいくつもある。ところが、その国道を直接航路で結べないところも中には存在するのです。



 長崎県は壱岐・勝本港に、国道382号線の「ひとつの」起点がある。
 ここ勝本は漁港であって、フェリーは着岸しないのでここは国道の接点にはなりにくい。ここが一番対馬と近い場所ではあるのだが、対馬への航路は反対側の郷ノ浦への寄港となるのだ。だからある意味では、ここを起点と言ってしまってもいいのかも知れない。



 曾良、というとやはり奥の細道で松尾芭蕉と旅を供にした俳人であることが浮かぶ。
 ここ壱岐に、曾良の墓がある。



 壱岐は全周で20kmほどの小さな島なので、すぐに反対側まで着いてしまう。
 郷ノ浦は博多への船が最も多く出入りする港で、開けた街でもあり活気にもあふれている。夏休みとあって家族連れが多い。



 郷ノ浦からわずか数キロで石田港に着く。
 ここから佐賀県・呼子にフェリーが出ているのだが、これに乗ったところで対馬へ渡るためには博多までかなり走らなければならない。
 国道はここ石田までなのだが、少し足を延ばして芦辺まで走る。ここから博多へ出て、再び対馬行きの船に乗ろうと言うものだ。



 郷ノ浦からなら対馬行きの船もあるのだが、着くのが深夜になる。もちろんそれから宿の手配はつくわけもなく、それならば博多からの夜行フェリーを使うのが手、というもの。
 折からの夏休みで、船中は足の踏み場もないほどの満員だ。これほどの混雑は、廃止直前の青函航路ぐらいしか記憶にない。その多くが家族連れで、子供たちはその状況でも暴れ回る。迷惑千万・・・



 博多から対馬・比田勝へ向かう夜行フェリーは、それとは逆に閑古鳥が鳴いていた。車両は4輪4台、バイク2台。混雑と子供を警戒して、窓口に並んで奮発した一等船室にはほかに客なし。静かな夜を迎えた。

 早朝4:20、比田勝に上陸。まだ空は明けていない。7時まで船中で仮眠をとれるのだが、車両は4:20で降ろさなければならないので、そのまま出発した。



 夜明けを待って国道をトレースし始める。ここ比田勝が本来の北の端になる。



 ここ上対馬から韓国まではわずか50kmという。それは九州本土より近いことを意味する。写真に撮れるほどはっきりと見えるわけではないが、水平線にかすかに起伏が見える。九州本土は見えないので、韓国が近いのは確かだ。



 対馬は林道が豊富にある。国道を1km走る間に2〜3本の林道が誘う。なかには国道と平行して通り抜け可能な林道もあり、オフロード派にはたまらないところ。
 試しに2本ほど走ってみる。荒れているところもなく走りやすかった。CCR作るにはいい島だな・・・



 GPSのポインターが、海峡にさしかかった。
 対馬はその字の通り、上下2つの島に分かれており、万関橋で結ばれている。明治時代までは陸続きであったようだ。



 もうひとつ、実は大船渡でも分かれており、実際は3つの島になる。
 ただ、ここ大船渡はなんとなく人工の水路臭い・・・事実はどうか分かりませんが。




 対馬まで博多から船で5時間半。ジェットフォイルでも相応の時間がかかる。
 となれば、飛行機も交通の一端を担っているのは言うまでもない。比較的ひなびた島である対馬の中で、ひときわ近代的な空港がある。空港の看板には日本国旗と韓国国旗が描かれていた。

 空港そばには、対馬の石屋根という古い建物が。屋根が石で葺かれている。



 港町の雰囲気になってきた。これも国道。



 厳原で国道382号線は終わりを告げる。

 海の向こうへ続く道。

 しかし、そこは容易には渡れなかった。1日2往復しかない壱岐への航路、それを使ってこの国道を走り通すと言うことは困難だった。



 厳原フェリーターミナルは、異国だった・・・
 ターミナルだけではない。街をすこし歩いても、聞こえてくるのは・・・

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