第三回 YAMAHA XTZ750 Super TENERE

YAMAHA XTZ750 Super TENERE
パリダカールラリーで勝つために生まれたマシンを公道仕様にした高速オフロードツアラーである。デザイナーは桜井清章氏で、氏は同年代のヤマハのオフロードマシン、DT200WR(3XP系)のデザインにも深くかかわっている。
桜井氏HPはこちらからどうぞ
○PAGE1 : 走行性能、積載性、整備性
○PAGE2 : ランニングコスト、電装系、総評
走行性能
○総評
非常に大柄な車体のため、低速での取りまわしは慣れていないと相当苦労する。230kgという走行重量はリッタークラスのロードマシンと同等であるが、高い位置に搭載される27リットルタンクや最低地上高、着座位置から重心も高くなりがちで、寝かせこんでからの復元にかなりてこずる。慣れるとアクセルで簡単に起こせるようになるのだが、やりすぎると今度はタイヤサイズに対して巨大なトルクのため、あっさりとサイドスライドしてしまう。見た目からも感じられるように攻めるマシンではない。しかし一旦動き始めてしまえば、その重量感などはあまり感じることはない。

○街中
低速での取り扱いが神経質な以外はいたって普通のマシンだ。重心位置が高いので前述のとおり低速ではそれなりのテクニックを要するが、一旦動き始めてしまえば切り返しなどもステップ荷重とアクセルワークで楽に行うことが出来る。すり抜けも慣れれば普通のトレールマシンと同等に出来るが、一旦バランスを崩すとすぐ転倒に繋がるため、出来れば避けたい行為だ。

○ワインディング
のぼりは結構攻める事が出来るが、ブレーキがオフ車らしくプアな効き具合のため、ロードマシンと比べて手前でしっかり減速し、脱出加速を重視するほうがいいだろう。腕さえあれば400ccレプリカとタイマンを張ることも可能だが、それもあくまで腕があればの話で、やはりツアラーらしく、勝負しないに限る。ロードマシンと勝負しようとなるとタイヤを限界まで使用することとなるので、余裕のない走りで命を落としかねないのでやめよう。では普通に走る分はどうかというと、排気量から来るエンジンの余裕のおかげで、ほとんどAT感覚で走行することが出来る。タイトターン以外は4速ホールドで十分だろう。

○オフロード
見た目からの予想に反し、しっかりオフロードバイクしているとの印象だ。特にリアサスの出来は秀逸で、起き気味のスイングアームの影響も大きいのだろうが、かなり荒れた路面でもしっかりグリップし、登攀能力もかなり高い。実際近所の河川敷の土手を登坂することが可能であった。タイヤの選択はロードよりのオフタイヤで十分だろう。本格的オフタイヤが必要となるようなシチュエーションの場合、かなりのテクニックがないとまず走破することが不可能である。やはり重量と足つき性の悪さが大きな要因だ。ブロックタイヤを履いた場合、やや遅れをとりはするものの、トレール車と一緒に走ることも出来る。ただしこれも登りの場合で、下りの場合はかなり神経質にならざるを得ない。重くて前輪が負けてしまうのだ。エンジンとタンクでしっかり前荷重がかかっているため、下りだとしっかりリア荷重をかけて慎重に走破しよう。これ以外はびっくりするほど普通に走ることが出来るのだ。
積載性
リアに大型アルミキャリアがついているものの、無加工だとそれほど高くはないといわざるを得ない。フックがキャリアにしかないのだ。筆者のマシンは前のオーナーがよくツーリングに出かけてたおかげですでに加工済みで、シートや車体の数箇所にフックが増設されている。シートバッグやサイドバッグを使えば積載性は飛躍的に向上し、1週間ほどの旅装ならばらくらく積載可能だ。

リアキャリアの内部は小物入れになっているのだが、本来荷物を積んで長距離を旅行するように設計されているため、内部には車載工具を積むと、パンク修理キットくらいしか積む事は出来ない。筆者はパッチキットと予備ヒューズ類、タッチペイントを積載している。

00/03/06 三浦半島ツーリングからの帰宅時
整備性
最初は低いと思っていたのだが、思いのほか高い整備性を誇っている。各種整備をするためにはサイドカウル類を外す必要があるのだが、これさえ外しておけば、ほとんどの日常メンテナンスが可能となる。こういうところはさすがパリダカマシンを母体とするだけあると感心する。

○油脂類交換
冷却水は左フロントサイド内部にあるラジエーターキャップから補給する。ドレンはエンジン右下にあり、キャッチタンクは左リアサイド内部にある。エンジンオイルの交換はアンダーガードを外す必要がある。ドレンは2箇所あり、オイルパンとキャッチタンクそれぞれのものだ。オイル要求量は4リットルで、フィルター交換時は4.2リットルもの量を必要とし、補給は右サイドカウル内にあるタンクから行う。ドライサンプのために交換作業はちょっと手間である。オイルは普通に走っている限りは2000マイル程度でもそれほどは汚れていないのだが、高回転を多用した場合はやはり、やや汚れとあわ立ちが目立つ。純正のSJ級オイルで充分である。フィルターはエンジンの基本設計が同じ、TRXやTDMのものがそのまま利用可能だ。
○プラグ&エアクリーナー交換
普通こういった車体構成のマシンの場合、プラグやエアクリーナーの交換は、タンクの積み下ろしという非常に面倒な作業を伴うものである。がしかし、スーパーテネレの場合、プラグは競技車両と同様に、ラジエーターAssyの固定ボルト2本を外して下に降ろすだけ、エアクリナーに至っては、ハンドルを左右にスイングさせるだけで、カウルすら外さずに交換可能である。このあたりの消耗品の交換の容易さには目を張る。

クリーナーはオフロードマシンとしては珍しい乾式であるが、主要な用途が超長距離移動であることを考えると、流入抵抗が大きく水をかぶることを前提に設計されている湿式よりは、乾式のほうが無難であろう。

フロントセクションのストリップ状態
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