Tour de 福井

〜今年で8回目を数える草ラリーの参加レポート〜

 「CCR」といわれる競技がある。
 Cross−Country−Rally(あるいはRaid)の短縮語で、コマ地図と距離などを頼りに道筋を探りながら走るもの。BACKtoOFFroadの中でも「林道探索倶楽部」で取り入れているのでおなじみですね。
 日本国内ではTBIなどが有名だが、なにぶん日程期間が長すぎ、また申し込み締め切りが異常に早いので休みを自由に取れる環境にないと参加することは難しい。
 そんなとき、1日ないし2日、週末のみで参加できる競技もある。そんなひとつに「Tour de 福井」がある。
 回を重ねて今年で8年目を迎える歴史あるラリーで、福井県の林道を使って200km前後の走行を堪能できるという。今年、2000年の開催は7月2日(日)、梅雨時の天候が心配だが、日帰りで参加できるのでここはひとつエントリーしてみた。

 まずちょっと不安点があった。
 それは、私の持つ唯一林道走行可能なバイク・Husabergが、車両規定にある「EDレーサーを輸入して登録したものは不可」という部分に該当するかどうかだ。
 確かにEDレーサーであるが、正規に国内の車検を通過したものだ。給排気系の改造も施していない(結構音は大きいが、排気系改造車に比べれば静か)ので非該当と認識しているが、念のため主催者にメールで確認して「たぶん問題ない」という結論に。
 おまけに直前になってトラブルで修理に入るなどやきもきしながら、受付締め切り日に参加申し込みをしたのだった。

 参加受理が届いたのは競技2日前。与えられたゼッケンは、Aクラスの5番。
 リストを見れば、1〜4番は初心者クラスの集団行動組で、5番からが一般クラスになる。栄光のトップゼッケン・・・おいおい、ちょっと待て。一番スタート???
 当日自走での参加になるため、スタート前の準備時間があまり確保できない。出来れば遅いスタートが良かったのだが、決まったものは仕方ない。前夜整備を済ませて本番に備える。

 自宅から現地までは150km程度だが、車検が7時半までなので高速を使う。そのためにスプロケットを高速型に変えてあった。現地到着は7時前、さっそく林道仕様にセッティングを変更し、受付・車検へ。
 心配していたようなチェックは何一つなく、外観チェックのみで車検パス。そのままパルクフェルメとなり、厳密には車両に手を触れることは禁じられる。

 

 配布されたコマ地図はA6用紙に6コマX29枚、全行程234kmを170コマほどで走るものだ。さっそくロール化するが、時間がない。マーカーを入れている間にブリーフィングが始まった。
 ブリーフィングの間もロールを巻き続けたが、これほど長いロールは初めてで、MAPホルダーの回転が非常に重い。これはちょっと問題だが、今更どうすることも出来ない。周りを見れば割り箸だけのホルダーとかいっぱいあったが、どうするんだろうか・・・

 

 そうこうするうちに、到着が遅れていたゲストの山村レイコさんが到着。ほどなくスタートとなった。
 Nクラスの4台が一斉にスタートしたあと、「5番・6番、準備してください」のアナウンス。自分の番だ。

 一緒にスタートするのはBMW R100GS。そういうことか、目立つ車両をスタートに持ってきたと言う訳ね・・・

 最初の数コマでNクラスに追いついた後は一人旅の始まり。事情はどうあれ、先頭は気分いい。
 しばらくぶり(昨年の群馬トレイルレイド以来)のコマ図だったために何度かルートを外れてしまったが、徐々に慣れてきた。

 なかなか林道は現れないまま、複雑にコマは進んで行く。

 

 途中で滝の写真などを撮っていたら、後続が追いついてきた。とりあえず先行させるが、分岐確認などで止まっている間に再び先頭へ。


 この頃、異変に気づいた。

 舗装の峠をそこそこの速度で走っていたのだが、なんとなく加減速でリヤがぶれる。確かにタイヤは減っていたし、空気圧も林道仕様に落としてはいたが、これほどブレは発生したことがない。
 よもやパンク?とチェックのために停車する。リヤ周りを目視で確認・・・


 一瞬、愕然とした。

 リヤホイールのアクスルシャフトを固定しているナットが無い!

 そうだ、あの時・・・車検前にスプロケットを交換した。その際に締め忘れたのだ。なんというミス・・・
 とりあえず里に下りる。商店街で自転車屋などを探してみるが、なにぶんM20という巨大なナットは存在しない。とりあえずだましながら走ることにする。
 廃材置き場などでナットを探したが、M16までは見つかるがM20はない。林道入り口まで来たところで応急処置をすることにした。要するにテンションブラケットさえ落としてこなければ、アクスルシャフトが完全に抜け落ちることは考えにくい。ブラケットをタイラップでスイングアームにくくり、落下止めにする。一番大きいタイラップをアクスルシャフトに巻き、少しでもシャフトのずれるのを止めようとしていた。

 そのとき、スイープの軽トラが追いついてきた。事情を話したが、さすがにそのサイズのナットは持っていない。
「大野の町へ出ればたぶん金物屋があるので、対策部品入手したいんですけど」
「コースはずれると追いかけられないので困るんです。失格と言うことに・・・」
・・・まだ始まったばかり。こんなところで帰るのもシャクに触る。部材さえ入手できれば簡単に直せるのだが。

 とりあえずステンレスワイヤーをもらって巻き付ける。ほとんど役に立たないかも知れないが・・・あまり無理をしなければ大丈夫だろう、と走り出した。すでにAクラス/Bクラスは全車通過しており、最後尾に近い。

 途中で道を間違えてとんでもない急坂に上ってしまったあげく立ち往生した2台の救援に加わったりしながらゆっくりと走る。無理をしなければ行けそうだ。今のところゆるむ様子もない。
 CPで先ほどのスイープの係員と雑談などしながら、すでにお気楽ツーリングモードに変わった私。

 CP3で昼食のケータリングサービスが入る。しばし休息。
 午前中は林道2本という状態で、距離の割には満足感がない。午後からは林道が増えるようだ。

 国道へ出たところで給油、近所にDIYのコメリがあったので立ち寄る。
 Husabergのアクスルシャフトにはφ12の貫通穴が開いている。要はここにM12のボルトを通すことが出来れば引き締め固定することが可能なわけだが、M12と思って買った長ボルトはなんと1/2インチ・・・12.7mmは通らなかった。M12は長さが足りず(250mm以上必要)目的果たせず。

 CAP走行のポイントに来た。
 CAP走行とは、方位磁石を使って方向を決めるものだ。北を0度として、文字盤に刻まれた角度数字からコマ図の指定角度を読み、その方向へ進むというもの。
 ここは330度、どうやら右手の道のようだ。

 草ぼうぼうだったが、これがルートに違いない。不本意ながらかなり後方を走行しているわけで、路面轍もすでに深くなっているから見極めは簡単だ。
 もちろんCCRの楽しみはルートファインディングにあり、それは前方がクリアな状態がベストだ。

 このTour de 福井は、「CCR形式で行うツーリングイベント」として公的に許可を取ってルートを決めている。そのため、コース各所にこのような看板を立てて注意を促しているのだ。
 最大で100台の参加があるイベントだ。無許可で行うわけには行かない。そのために競技性は放棄し、コマ図ツーリングとして複雑なナビゲーションをさせることに重点を置いているのだ。
 現実、町中などの走行が大半を占める。何カ所も間違えるほどだったし、自転車を抜いたと思ったら、ぐるぐる廻っているうちにまた抜き返されていたなどの事態が起きる。

 それはそれで楽しいものだ。コマ図を追い始めた頃はそれが楽しくて参加していたようなものだ。いつしかそういった一見無駄なルートを走ることを嫌い始めた自分がいる。
 正直なところ、途中から退屈になってきた。今回234kmという長丁場だが、9割方が舗装道路。もし中身を濃く作るなら、おそらく半分以下のルートになってしまうだろう。
 8回目を迎えるイベントだがリピーターは少ない。今回の参加者では最多で4回目、ほとんどが初参加というのもある意味ではわかる気もする。そこそこ数をこなしている人には物足りないところもあろう。

 しかし、いろいろな柵の中でこのような形になったことは主催者の中にも妥協に対する葛藤があるに違いない。本来ならもう少し競技性の高い、レベルもあがった状態での開催を想定したいだろう・・・と思う。
 すでにそのようなアンダーグラウンドレベルでの開催とはいかないほど大きくなっているということだろう

 それでも開催を続ける主催者に経緯を表し、ここは存分に楽しもうじゃないか。

 しかしつくづく私はこのアングルの写真が好きだね・・・
 先頭グループにいたらこういう余裕もなかったかも知れない。抜かれることに気を遣い続けなければいけないから。

 最終CPを過ぎて林道も最後の一本。このあたりを走っているクラスだと実際速度差がかなりあるのですぐに追いついてしまいかえって走りにくい。まあこちらもリヤを流して・・・などという走り方は出来る状態ではないので前車にあわせてゆっくり走る。

 やがてスタートした志津原キャンプ場が近づいてきた。
 ゴールだ。

 最終チェックを受け、完走賞のビール(!)をいただく。飲むわけには行かないが・・・
 この大会に順位はない。完走か否か、それだけしかない。何台かのリタイヤがあったようで、自分もその中に入っていたかも知れないわけだ。なんとか最後まで持ってくれたHusabergに、そして各所でサポートしていただいたスタッフのみなさまに感謝します。

 最後に・・・

 要リベンジ!!!


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