File16 焼き付きを考える

 ある日のこと。集団でツーリングしていた。
 人間も車両も調子よく・・・というところだったのだが、途中からアクセルを半分以上開くと排気音が割れて聞こえるようになった。
(これはガスケットでも逝かれたかな?)
ぐらいの認識だった。案の定、ヘッドのEX側タペットカバー付近に油漏れが発生していた。

 そのまま放って置いたのだが、特集のTour de 福井に参戦のためにちょっと整備するか、とショップまで乗っていった。
 そのとき、途中でエンジンが止まってしまい、それ以後アイドリングしなくなり、エンジンが異常に熱を持つようになってきた。
 状態は判らないのだが、タペット音が大きくなったように感じる。ショップにたどり着いてとりあえず音の確認をし、そのまま預けた。

 それから1週間、原因が判明。



 これはバルブ駆動用のロッカーアームだ。
 HusabergのシリンダーヘッドはSOHC 4Valveなので、ロッカーアーム駆動になる。そして、このエンジンの特徴として、カムフォロワーにローラーベアリングが使われている。
 これは珍しい形だ。国産のエンジンにはこの形式はおそらく見られない。4輪のエンジンで日産のSR18DE型に採用されているのが確認できる程度だ。
 ここのフリクションを減らすことはレスポンスの向上と中・低回転での追従性に有利としている。
 今回、このローラーベアリングが焼き付いてしまったのがトラブルの概要だった。



 ローラーでフリクションが少ないため、タペットクリアランスが詰められている様だ。それが焼き付きによって回らなくなったために、カムがローラ面を擦って回ることになってカムの走行面にもキズが入っていた。
 幸いこの状態でもエンジンは回るので、他の箇所に支障はなかった。また焼き付いたのはEX側だけで、IN側には損傷がなかった。よって、カムシャフトとロッカーアームASSYの交換で修理は完了した。


 原因は、冷却液の不足、と診断された。
 昨年バルブシート欠損によってヘッドを開けた時から、全開にすると内圧に負けて冷却水が漏れる症状が出ていた。砂型鋳造によるクランクケースとシリンダーの合わせ面がガスケットに融和せず、ずっと漏れていたことは判っていたこと。想像以上に冷却水は漏れていたのだ。
 要するに整備不良ということ。

 修理代?

 12万円ほど・・・

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