バイクに乗って16年にして、大型免許を手にすることになった。
取れば当然大型導入・・・というわけで、いろいろと候補を上げてあたっていった。
候補としたのは、
SUZUKI DR800S
SUZUKI XF650Freewind
CAGIVA E900Elephant
KTM 640Adventure
BMW F650Funduro
以上の5車種。これまでの経験から、SUZUKIでなければ他の国産メーカーはいらない、と外車中心の選定になった。
この中で、現役で新車が買えないのがDR800SとE900。中古でもいいから、とあたってみたが、DRはまだしもエレファントは見つかるはずも無し。よって中間排気量クラスの3車に絞った。
問題は、DR250とHusabergのどちらを手元に残すか?それによって導入する車種が大方決まる。
いろいろ検討の結果、値落ちの激しいHusabergは売るに値しないということで残すことにした。DR250を代替えすることになったわけだ。
そうなると、過激な走りの車体が残ったわけだから、もう一台は旅用のものがいい。3車比較でラリー色の濃いKTMが消えた。まあ、値段も値段だったが。
残った2台、FunduroとFreewindは性格的にとても似通っている・・・というよりは、FreewindはFunduroをターゲットに開発されたものである・・・ので、どちらを選んでもいいのだ。
SUZUKIは16年来のつきあいで信頼しきっているし、値段も画期的に安い(400ccクラスより随分安い)なにぶんもう一台が壊れる上に値段の張るヤツなので、これは決まりか、と言うところまで行った。
が、時は年末。「SUZUKI」とは言え、実は逆輸入車であるFreewindの99年型が在庫切れしていた。国内での人気は無いに等しいFreewind、2000年版の入荷は不明だ。
対するBMW。これも、2000年型で大きなモデルチェンジが行われることはわかっていた。
こういうとき、新型を待つかどうかが実は駆け引きのしどころなのだ。新型が期待はずれだった場合、旧型を新車で入手するのは極めて困難になる。その時点で新型の姿は判明していなかった。
現行型はひとつの完成形として評価が高い。「BMW」と言ってもエンジンはロータックス製、フレームはアプリリア製でイタリアのアプリリア工場で組み立てられている。SUZUKIユーザの自分はアプリリアに悪いイメージは持っていない。かなり親和性の高いメーカーだ。
さらに、2000年型からはドイツ本国のBMW工場で生産されることがわかっていたが、実は99年後期型はすでに組み立てをドイツで行っていた。
では、F650は入手可能だろうか?
愛知県のSモータースに問い合わせたところ、1台最終型を確保してあり、すでに日本へ発送された船の中にある、ということ。
そう、新型が良ければ、買い換えればいいのだ。金銭面さえなんとかなれば。
こうして、F650 Funduroが我が家の一員になった。
では細部を観察してみましょう。
グラマラスなガソリンタンクは、全面がプラスチックのカバーになっている。そのため、マグネット式のバッグ類が一切使えないというのはツーリングバイクとしては失格。
幅が広く前後に短いタンク形状で、容量は17リットルを確保している。幅広ではあるがニーグリップはしやすい。
プラスチックであることは他にも弊害がある。ケブラー素材のパンツなどでニーグリップすると、そこが擦れて塗装が痛むのです。これは白い車体だから、というのが大きいですが。ホワイトワックスで汚れは取れますが、本来プラスチックはシリコンを嫌ううえ、ニーグリップするのに滑るのはいただけない。これはどうしたものかと・・・メーターパネルにはタコメーターやアナログ時計も装備する。インジケータ類も4輪車並み。これはしかし、燃料計や水温系を装備して欲しかった。どちらかといえば必要なのはそちらだから。
レバー類は遠く重い。クラッチは若干切れが悪いので、遊びをもたせると渋滞などで大変。私はこれをほとんど遊びなしにセッティングしているが、バイク屋のサービスマンに散々説教された。
確かに高価な車体でもあり、車体が痛むのは避けたい。そしてそのためにはそこそこの遊びを作ることがセオリーなのだということは理解できる。
しかし、ライダーに不具合を感じさせるセッティングを強いるなど、「駆け抜ける喜び」をキャッチフレーズとするBMWの姿勢に反する。
脱線したが、ブレーキレバーはブレンボのもので、ロード系のカチッとしたタッチのものだ。レバーに調整がないのはいただけない。 ウィンドプロテクションに優れたカウルは建て付けもよいが、夜間に若干の不満がある。
ヘッドライトの上方光線をスクリーンが拾ってしまい、全体的に光ってしまうので目障りで前方視界に少し影響が出ること。
ヘッドライトは明るく、レンズカットも街乗り/高速走行ともマッチングがよい。欧州からの輸入車に多く使われているE球ではなく、H4が使われているのは評価したい。ブレーキは前述通りブレンボだ。効きも申し分ないが、ほこりに弱いのはブレンボ共通だ。そして、ディスクがさびやすいのにも問題あり。洗車するとてきめんに錆びる。
考えてみれば、BMWの生産するバイクで唯一のチェーン駆動なのがこのF650。メンテナンスフリーとはいかないかわりに、ギヤ比を容易に変えることが出来るのはありがたい。 これは改善したいのだが、サイドスタンド使用時はエンジンがかからない。停車時に先にスタンドを出すとエンジン停止する。
安全のためなら、クラッチと連動のタイプで確保できる。しかし、こういう仕様になっているのには理由がある。環境問題から暖機運転などするな!という事のようだ。
私のような使い方(時々バイクを停めて写真を撮ったり)では、何かと不便だ。 BMWのツーリングバイクとしての資質を疑うのはこのキャリア。ロープフックは一切ない。あくまで箱を取り付けることしか考えられていない。その証拠に、キャリアの裏側にはナットの入る穴があり、アルミダイキャストのキャリアに穴を開けて取り付けることになる。
「長旅」用としてはそれが良いのかも知れない。しかし、短い「ツーリング」には少ない荷物で軽快に走りたいときもある。BMWのなかではそんな性格が強いのがF650なのであって、ソフトバッグを積載することは考慮が必要だろう。文化の違い、と言ってしまえばそれまでだろうが、それでは世界最量産バイクの名が泣くというもの。
エンジンについては、あまり好印象はもてないものだ。高回転域は良いのだが3000回転以下は全く使い物にならない。一般道では4速までしか使用できないし、高速道路では制限速度を遙かに超える速度を要求される。これはギヤ比の変更である程度カバー出来るだろう。このあたりも輸入時に実状に合わせてカスタマイズして売るべきものだろう。
水冷の大型単気筒エンジンは発熱量が大きく、渋滞は苦手で常にファンが回りっぱなしになる。夏場は大きなカウルと相まって、かなり厳しいものになるか。
車体はコンパクトで、スペック上の車重よりはるかに軽い。ハンドルが若干遠く、またひざの曲がりが大きすぎるのはBMW車に共通の項目だ。シートは秀逸で、長距離には最適なモノだ。
結果的に、長い距離を高速移動するためのバイク、という位置づけになるのだろう。
日本国内ではその性能を発揮しにくい(標準状態では)のが現状で、少しテコ入れの必要はあるだろう。