第一回 Husaberg FE400E Elduro(97年型)

 突然我が家にやってきたとっても極悪なバイク、HUSABERG FE400E
 もともとがレーサーですから、とてもそのままでは日常の使用に耐えません。なんたって、納車当日からいろいろと笑わせてくれます。まずは顛末から。

 私のは97年モデル。購入したのは99年ですから2年落ちですが、未登録の新車でした。新車価格は123万円。

 愛知県豊田市、トヨタ上郷工場の前にある「TOKAIオート」へ行ったのは98年12月19日のこと。目的は「FE400Eの99モデルを予約する!」でした。
 店頭に着くと、そこには2台のFEが並んでいました。1台はスーパーモタルド仕様、もう一台は97年型の普通のモデル。実は、以前からこのモデルは名古屋ローカルの中古車雑誌に載っていました。価格は97万円として。そして、その日そこで着いていたプライスタグには「88万円」の文字。

 店長と話をしながら99と97を比べる。一番の違いはリヤサスで、99はKTM同様のリンクレス、97はボトムリンク。やはりここに集約される。
「日本人にはどちらかと言えばボトムリンクが合っていると思う」
なるほど。まあ自分の腕と用途には、どちらでも関係ないか。
 そこで80万円まで値段が下がったところで、97年モデルの購入を決めた。実に43万円引きである。

 納車は99年1月17日。が、ちょっと待て、この日は仏滅であった。やむなく前日の定時後、残金を持って行き、納車札にサイン、書類のみ受け取ってきた。実車は一晩預かって貰うこととし、とりあえず先負の夕方、納車。
 翌日、正式に受け取りに行く。そして、バイクでは初めて任意保険に加入した。
 さて、帰ろう、と走り出す・・・が・・・

メーターが動かない!

 すぐに引き返して
「あの〜、メーターがまったく動かないんですけど・・・」
さっそく調整に入ってもらったが、なかなかうまくいかず約1時間。原因はこんなところにあった。

 ここをしっかり止めていたため、フォークの動きによってケーブルが屈曲し、中のワイヤーが回らなくなるようだ。どうもケーブルのクリアランスが大きい様で、このあたりはこのままではいずれ同じ結果だろう。帰り道、ずっとメーターの針は不安定だった。

 こんどこそ大丈夫、と帰路に付く。走り出してすぐ、バックミラーが役にたたないことに気づいた。なんたってφ8の長い丸棒の先端に重いミラー乗っけていれば振動をひろう。しかも右は自転車用のクランプ固定、左はタップ直切り・・・


 なんとか自宅まで帰り着く、というそのとき、なんとヘッドブラケットのナットがゆるんでいる!・・・でもこれはバイク屋のミスじゃないのか?たぶん。如何に振動があるとはいえ、1時間半で取れたりはしないでしょうに。
 ナットを締めて、電装系をチェックしていた(普通は走る前にやるんだけど)。あれ?

ウインカーが点かない!

 ひえ〜、このまま走ってきたのか?メーターに気を取られて気づかなかった・・・
 テスターをあてて配線をチェック、導通はある。以前電球が入っていないなんてことがあったので、それも確認。そして、電流チェック、とリレーに当たったら、電流は流れていた。となれば、これはリレーのパンクである。
 自転車置き場のDRをながめる。どこにリレーが付いていたっけ?これを付けて点灯すれば間違いない。

 そのとき、隣にある崩壊放置スクーターに目がいった。そこには、むき出しのウインカリレーが!
 表示を見れば12V8Wx2、問題ない。でもこれ動くだろうか?とりあえず拝借してつないでみた。

 なんなくウインカーは点滅した。バイク屋に電話して、対策部品を送ってもらうことになった。
 送られてきたリレーは、ポジション機能付きのもの。それと、「もしもの場合の代替え品」としてヤマハMINTのリレー・・・それではワタシの使った放置スクータ用と同じだ(笑)

 納車から一週間、各部改善作業(これまでになんどか二輪車強化工房などで書いてきた内容ですね)を施していた。ネジを締めようと力を入れたところ、いきなりバイクが傾いた!
「おーっと!」
左側に立っていたので辛うじて支えた。スタンド立て直そうとして見ると・・・

 なんとなんと、スタンドが折れてしまった!・・・なにをかいわんや、である。しょうがないので、庭のフェンスにたてかけてワイヤーロックで転倒防止をし、ワンアップスタンドをかませて立たせた。そして折れたスタンドを持って会社へ走る。
 よく見ると、溶接がしっかり行き渡っていない。特に応力集中する裏側がまったく付いていない。やたら寝る傾向にあるなあ、と思っていたら、すでにクラックが入っていた様だ。
 自分で完璧に溶接する自信がなかったので、出勤していた常務(!)に溶接をお願いした。わざと少し起こし気味に溶接してもらった。で、立ててみたらこんな感じ。やや起き気味のDRとの比較です。


 日常使用だとアレかも知れませんが、私なんかの用途だと、バイクは「非日常」で「ワルガキのおもちゃ」なもので、気分に浸れるモノを選んでしまいます。
 EDレーサーに最小の荷物を持って、ゴアテックスなんかのスタイルでキメて・・・

 DRでツーリングしていて、燃費もいいし、長距離でも疲れないんだけど、もちっとパワーほしいなあ、と思ったわけで。高速を500kmぐらい走ると、アクセルひねってる右手がしんどいんですね。
で、排気量のでかいのがいいなあ、でも免許ないよなあ(当時、ね)、
400cc・・・XRやWRはセルないなあ、キックやだなあ、
それでもレーサーっぽいスタイルのがいいなあ、
DRに慣れちゃってるんで、重いのは扱いきれないなあ、、、

 で、選択肢は多くはなかったのです。
 他のと比べたときに、スタイルその他の「いっちゃってる度」が高かったので、結局あれこれ悩んだというより見た目勝負ではありましたが。
 たまたま出物があって、ロード400ccと大して変わらない値段だったし。

 ポジションも自由度が高くて長距離でもきつくないし、現実、3ケタ速度ではもう全然楽です(対250比)し、実際にツーリングに使ってますしね。だから高速使ってのツーリングなら、DRよりFEを選んでいました。

*エンジン
 とても私にゃ扱い切れません。とってもパワフルです。しかもトルクも厚く(比較がDRとアルテシアだから、力不足かもしれないけど)渋滞を2〜3速で走ってしまう柔軟性もあります。
 ただ、アクセル操作には細心の注意が必要です。交差点で2速からアクセルあければ、140サイズのタイヤは簡単にスライドする。また、1速・2速では、ごく低速でも軽々とフロントを持ち上げる。体重移動もクラッチ操作も不要です。アクセルオフ・オンでOKです。
 ややニュートラルが出にくいのが難点。なんたってニュートラルランプがないですから・・・でもシフトそのものは素直に入りますし、抜けにくい。
 音は、思っていたよりは静かでした。でもやっぱり極悪ですけど。排気音そのものはDRより少々大きいだけです。メカノイズが大きいですね。
 心配なのはオイル容量が1リットルしかないところ。交換頻度を高めて対応するしかないでしょう。指定が5W−50てのがまた泣き所ではあります。

 始動性は抜群、チョーク不要ですね。キャブがデロルトのφ38、始動時に多少バックファイヤーがありますから、やや濃いですかね。キックでかけるのにもそれほどコツはいりませんでした。
 温間時は、セル始動ではバックファイヤが発生しやすい。温間時にはキックを軽く踏むだけでかかるので、通常はそうしています。走行中のエンストなど熱間時はキックではかかりにくいので、セルを使います。このときはバックファイヤも起こらない。

*車体まわり
 ポジションはかなり大柄。シート高もかなり高い(915mm)。シートそのものにも厚みがあり、以外とラクかもしれない。角のおちたシートは尻ずらしのリーンアウトがしやすい。
 8.3リットルと量的に不安なタンクは、スリムでいいが、もう少し幅があっても支障はなさそう。高さももう少し使えそうなので、特注品を作ろうかとも考えている。リザーブもないので、現状はシグボトルを持ち歩くことになります。
 この大柄なポジションは優れた直進安定性を持ち、スタンディングポジションも取りやすい。
 ブレーキは前後ともブレンボで、フロントは効き、操作性とも申し分なし。リヤは・・・あんまり効かない。

*実走してみる
 フロントサスが堅い。これをなんとかしてやらないと、ガレ場でとばされてしまう。ここさえクリアになればリヤサスの追従性は非常にいいので相当走れるでしょう。なにより路面を掴む力にはすぐれており、駆動力は絶大です。
 このバイクが最大の力を発揮するのは、荒れていない急な登り坂で、とにかくアクセルを開けてさえやれば強烈に加速していきます。何しろ下があるうえに、高回転までストレス無く回っていってしまうので、トラクションを稼ごうと高めのギヤを使っているとそのままとんでもない速度になっていることが多々あります。


 ある日のこと。

 待ち合わせまで1時間、ちょっと出かけるのが遅れたので、高速を使う。
 東名阪の四日市東ICから乗ってすぐに御在所SAで給油、時速85km前後で走る。
 鈴鹿ICに達したときにそれは起こった。

「バスッツ!」

こんな感じの音がして、突然エンジンが止まった。
 瞬間、「あ、こりゃだめだ」と頭によぎったのですぐに路肩へ。セルを回してみてもエンジンはぶすっともいわず。たまたま鈴鹿ICの出口レーン直前だったので、押して高速を降りる。

 セルでクランキングはしているので、プラグをはずしてみる。焼け色は若干黒いものの、破損なし。火花も飛ぶ。
 キックを踏んでみる。やけに軽い。圧縮が上がっていない・・・

 やむなく愛知県豊田市にあるフサベルのディーラーに連絡。状況を説明、これはだめだと判断。迎えに来てもらう。
 日陰に持っていって、試しにもう一度キックを踏んでみる。圧縮が若干上がったような気がする。セルを回してサイレンサー出口に手を当てる。排気されている。
 バッテリーが弱ったので、キックをすこし踏んでみた。一回バックファイヤー発生。これはかかるかも。

 思い切って猿キック(笑)に挑む。
 やはりキックは軽い。やめておこう、と思ったとき、

ぐらり!

お〜っと!・・・バイクが倒れてくる。
(注1:左キックなので、スタンドたててまたがらずに踏んでいました)
なんでやねん、と見れば、スタンドの角度が・・・
あちゃ〜、また折れてしまった。。。
(注2:4本目です(泣)しかも今回はRMX用の強化バージョンだったのに)
 その後はおとなしくお迎えの車を待っていました。来てくれたバイク屋のにーちゃんがキックを踏んでみる。
「だめですね・・・」そーですね・・・

 さて、問題はこれから。積んで帰るにも、サイドスタンドが使えない。どうやって固定する???
 ・・・さすがは本職。スタンドなしで立てたまま固定してしまいました。写真撮っておけばよかった。


 エンジンの破損個所ですが、インテー側のバルブシート破損でした。
 原因は、キャブレター(デロルトのフラットバルブ)のスライドバルブが、欠けて吸い込まれ、バルブシートとバルブの間に咬み込んだのでした。
 ですから、直前のエンジン息つきはすでにスライドバルブにクラック発生、不安定だったためと推測されます。
 ニードルのセッティングをしたのが7月半ば、その際には見つかりませんでした。組んだときにキズでもつけたのだろうか?

 ヘッドの燃焼室にも小さなキズがあったのですが、ペーパーで磨く程度。シリンダー&ピストンは無傷だったということで、一安心です。
 キャブはASSY交換になりました。あとバルブシートとバルブが交換になったのですが、なんと、本国で部品が欠品していたそうで、時間がかかりました。

 また、サイドスタンドについて。

 トーカイオートでは、私のFEを参考に、最近RMXのスタンドを、何台かのHusabergなどに採用していたようです。
 それが溶接剥離で折れていたので、補強の検討に入りました。とりあえず、RMXの標準状態で溶接脚長5mm程度のものを、全周溶接の脚長8mm程度まで補強しました。
 しばらくそれで様子を見ることにします。

 完全に実験車両化している・・・


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