File15 赤福

 ご当地モノ、と一言で言ってもいろいろある。食べ物、飲み物、あれやこれや。
 三重県伊勢市は伊勢神宮で全国に知られる。一生一度はお伊勢参り、と古来から親しまれているが、その伊勢神宮の軒先に暖簾を揚げるのがご存じ「赤福」だ。

 赤福は、要するに餡餅だ。
 つきたての餅をこしあんでくるんだもので、シンプルな味わいは古来から変わらぬものだ。店先の帳場(カウンターと呼んでは風情がない)で食券を買い、緋毛氈に座れば、伊勢茶と赤福が出てくる。まさに「茶屋」とよぶにふさわしい。江戸時代のドラマを地でいくような佇まいだ。

 赤福では「朔日餅」と呼ばれる、毎月1日に限定の餅もあるのだが、これはグルメブームの影響か、ほとんど入手不可能なのが現状だ。
 また夏には「赤福氷」なるかき氷も販売される。これは抹茶のかき氷で小豆が赤福になっているものと想えばよい。抹茶の味と赤福の甘みが微妙なマッチングを醸し出す。甘いモノが苦手な諸兄にもお勧めできる。

 赤福は、伊勢神宮内宮の表参道、「おかげ横町」にある。バイクの場合は入り口付近まで乗り入れ可能で、駐輪場からわずか100mほどのところに店がある。
 しかし、ここへ来たからには伊勢神宮にお参りしてから、というのが礼儀と言うもの。

 五十鈴川にかかる宇治橋を渡れば神域に入る。毎月17日の神嘗祭には大勢の「観光客」が訪れるので、避けた方が無難だろう。
「神宮」と略すことの出来るのは伊勢神宮だけである。これは日本書紀からのものである。脱線するが「大社」も名乗ることの出来るところは限られている。出雲大社や春日大社など。神社にも当然ランクがあって、タテ社会なのである。
 ここ伊勢神宮では、20年に一度、遷宮と言って、社殿を建て替える。わずか20年、もったいないと言う無かれ。伊勢神宮の遷宮によって解体された部材は、すべて系列神社の建て替えに使われていく。それがひとつの伝統と意志の伝達になっていく。

 こんな歴史(神道に通じる)を学ぶにも最適な伊勢神宮、おかげ横町で赤福食べながら訪れてみるのもいかがなものでしょうか。

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