今年は、暖かい日々が続いているけれども、

それでも今は2月、

いわば冬の真っ只中。

バイクで走る人がそういるわけではない季節。

しかしオフロードの世界には、

敢えて寒さの厳しい、

雪のある場所へ向かう人がいる。


ある日私は、群馬県の高崎と長野原を繋ぐ

国道406号を走っていた。

その日、途中にある須賀尾峠からは

遠くの浅間山や白砂山が良く見えていた。

「折角だから、麓まで行ってみよう」

そう思って、いつもなら引き返す峠を下る。

峠の下は草津の入口、長野原町。

残雪があちらこちらに見え隠れし、

そして空からも舞い降りているのだった。


私は野反湖方面へ向かう国道405号に進んだ。

ひたすら上り坂が続く道。

普段でも頻繁な操作が必要だが、

小さいKSR2では更に大変。

それでも負けじと走って、尻焼温泉の入口に。

雪はいよいよ道路にも出てきた。

ここからが本格的な戦いの場である。

人も車もまばらになってきた。

天気も一向にすぐれないのが、ちょっと心配だ。


凍った路面を走ると、脇に尻焼温泉が見えてきた。

川から涌き出た温泉は、凍ったりはしない。

いつもならこの時期でも人はいるものだが、

今日に限っては私ぐらいしか訪れないようだ。

道路の狭い隙間にバイクを止めて、

温泉をしっかり堪能していったのはいうまでもない。


尻焼を過ぎて、今度は草津方面に向かう県道へ。

この時期はその道幅の狭さと

眼下の谷が深いということもあってか

かなり恐怖心を掻き立てられる。

対向車が来たら、まともにすれ違いもできないからだ。

そんな状況の中、深く深く積もった雪の上を、

着実に、そして慎重に走り抜けていく。

しかしこの後、道路周辺は猛吹雪と化し、

撤退を余儀なくされてしまった。


長野原に戻り、私は北軽井沢から国道406号に戻る

二度上峠に向かうことにした。

こちらの天気はすこぶる快晴だった。

すぐ隣町にいるとは、到底思えない程に。

峠は強風が吹きぬけてはいたたが、

眼下には関東平野が広がっていたのだった。


峠の下でちょっとした雪遊びに勤しんでみる。

小型車の旋回性を活かして、自由に走り回る。

冬でないとできない遊びは多い。

この時期ならではの楽しみがあるから、

私はこの季節に敢えて走る。

冬のフィールドが、他に無い魅力を持っているから。

レポート:山本 賢史


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